2011年に発生した東日本大震災から9年。machicoでは、2012年から震災に関する意識調査を毎年実施しています。今年も2月に実施したアンケート回答739件の集計結果を発表します。さらに今回は、地震だけでなく、近年急増している豪雨・台風などの自然災害全般に対しての防災意識を高めるべく、防災のプロにもお話を聞きました。今、私たちが何をすべきなのか、「3月11日」を通して考えてみましょう。このアンケートが、自然災害から自らの命を守るきっかけになれば幸いです。
この結果から、これまで減少傾向にあった「自然災害に対してとても不安に感じている」人の割合が、2018年以降徐々に増えてきているのがわかります。その要因や今後気を付けるべき災害について、防災のプロにお話を聞きました。⇒詳しく見る
Q5-1、Q5-2の結果からわかるように、災害発生時、「家族や知人との連絡手段・集合場所を決めていない」「これから決めようと思っている」人の割合は、毎年40~50%近くに上ります。決めていない理由として最も多かったのは、「話し合うタイミングやきっかけがないから」でした。そんな方々に向けて、きっかけや決めておくべき内容について、防災のプロからアドバイスをもらいました。⇒詳しく見る
「食糧などの備蓄」「防災グッズの準備」が、毎年上位に挙がります。しかし、「準備しなければいけないものが多くて、何から手を付ければいいのかわからない」という方も多いはず。そこで、無理なく用意できる防災対策のポイントを防災のプロにお聞きしました。⇒詳しく見る
この設問には、皆さまからたくさんの疑問、質問をいただきました。その中から、特に多かった質問とそれに対する専門家からの回答をまとめました。ご家族やご友人と一緒にじっくり読んで、いざという時に備えましょう。
ご協力いただいた専門家
特定非営利活動法人防災士会みやぎ 理事長・児玉敏幸さん
宮城県名取市在住。会社員として働きながら、2012年に防災士の資格を取得。現在は、妻と愛犬(ミニチュアダックスフンド)の2人と1匹で暮らしています。3人のお孫さんを持つおじいちゃんでもあります。
「特定非営利活動法人防災士会みやぎ」とは?
宮城県内に在住する防災士有志がつくる会。県内各地の防災訓練やイベントに参加して指導・講師を務めるなど、様々な啓発活動を行っています。
・「備えるべき災害の頻度が上がり、災害の種類によってどう備えたら良いのかのルールが明確でなくなっていることに不安がある」(福島県40代女性・saimeさん)
・「地球温暖化によるものなのか、台風や水害が多く感じる。この先もっと増えるのか、どう対策したらよいのか聞いて見たい」(宮城県沿岸南部30代男性・Yuta*さん)
児玉さん 皆さんが思われている通り、ここ最近は豪雨や台風などが日本各地で多発し、災害の危険性が高まっています。さらに、昨年宮城県内でも大きな被害が出た台風19号では、被害が発生した場所のうちおよそ3割が、危険区域としてハザードマップに示されていなかったことがわかりました。こうしたことから、これまで想定されていなかった場所で災害が発生する可能性が大きくなっており、豪雨や台風は誰にとっても“身近な災害”となってしまったと言えます。
しかし、ここで冷静になって理解しておきたいのが、地震や噴火と異なり、豪雨や台風はかなり前から対象地区や被害内容が予測できる災害だということです。それでも、「自分は大丈夫」「この地域は心配ない」と考える心理が働くと、命の危険につながる逃げ遅れが発生してしまいます。ですから、私たち一人ひとりが最初に行うべきことは「物ではなく心の備え」なんです。心の備えを万全にした上で、各自治体や町内会などが出している防災・避難情報に注意し、家族で決めたルールにも気を配り、様々な備えを進めるようにしましょう。
・「避難等、頭ではわかっているが、実際に災害が起きたら、きっとパニックになって行動できない。どうやったら冷静に行動できるのか、気持ちをどう持ったらいいのか、教えてほしい」(仙台市40代女性・がっこちゃんさん)
児玉さん 災害時に冷静に対応できる人はほとんどいません。パニックになって当たり前です。それでも、他の人に比べて落ち着いて行動できる人に話を聞いてみると、ほとんどの方が日頃から訓練を実践されていらっしゃいます。普段やっていないことはいざという時にもできません。できるようになるためには「考える」ことと、「身体を動かす(メモする・訓練に参加する・避難ルートを歩いてみる等)」ことをセットで行い、複数の形で記憶に残していくのが有効ですよ。各家庭でももちろんですが、各自治体や地域の防災訓練等に積極的に参加してください。
・「スマホで家族と連絡がとれると、電話番号を覚えるということをやらなくなり、スマホを無くした時には何もできなくなりました。いざというときのための備えについてマニュアルがあると良いです」(仙台市20代女性、ミクっ子さん)
・「震災後、家族と連絡がとれる方法」(宮城県内陸北部40代男性・ハンチョウさん)
児玉さん 災害が発生した時、離れた場所にいる家族とどう連絡をとればいいか心配ですよね。連絡手段としては、いつも自分が持ち歩くものや自宅の目立つ場所に家族の電話番号をメモしておき、「災害用伝言サービス」を活用して連絡をとる例が挙げられます。こうしたサービスの使い方を知っておくのと同時に、複数の連絡方法を段階的に決めるが何より重要なんです。
例えば、家族バラバラの状態で被災してしまった時、電話やライン、メールがつながらない状況になったとします。そんな時は、次のような段階を踏んで連絡を試みましょう。
(例)
第1段階:職場や学校など、家族が普段居る場所から一番近い指定避難所に逃げることを事前に決めて共有しておく
→お互いの携帯が使えなくても、避難場所に連絡をとれば家族を見つけられる!
第2段階:一つ目の方法がだめだった時のために、「連絡中継所(実家や友人の家など)」を事前に決めておく
→家族の安否や居場所の情報を集約できる場所があれば、そこを中心に連絡のやりとりができる!
このように、1つの手段が使えないケースを想定して別の手段を複数用意しておくことで、最悪の状況を避けることができます。しかし、災害時の決めごとは「簡単・簡潔」が一番です。複雑にならないように注意し、繰り返し確認を行うようにしましょう。
―マチコ編集部 様々なケースを想定しつつ、家族みんながわかりやすい方法にすることが大切なんですね。では、そもそも「話し合うきっかけがない」という方も多くいらっしゃいます。その方々に向けて、アドバイスをお願いします。
児玉さん 例えば、テレビから流れる災害関連のニュースをきっかけにしてみてください。食事中や家族団らん中に災害のニュースが聞こえてきたら、「うちはどうする?」と話題に出してみるといいですね。自然と話し合いの雰囲気をつくれるはずです。そこで決めたことや確認したことは、ぜひ「我が家の防災対策リスト」としてメモに残しましょう。ただ話し合っただけでは、災害時まで覚えていられません。だからメモに残して、家族一人ひとりがいつも持ち歩くところに入れておきましょう。自宅なら、電話機の近くや玄関に貼っておくのもおすすめです。
・「犬を三匹飼っています。災害時その子達が心配です」(仙台市50代女性・莉優さん)
児玉さん ペットは大事な家族です。必ずペット同伴で避難するようにしてください。しかし、近年各地で議論になっているように、避難所によってはペットの受け入れが不可になっている場所もあります。そういった現状も踏まえて、事前に準備を整えておきましょう。 基本的には、排泄などのしつけやワクチンの接種、持ち運び用のゲージに常に慣れさせるなどの訓練を行うといいですね。また、ペット用の救援物資が届くまでに数日かかるケースもあるので、いつも食べさせているペットフードやトイレ用品なども避難セットとして用意しておきしましょう。詳しい対策や必要な準備については、環境省が発行するガイドライン「災害、あなたとペットは大丈夫?」に記載されています。ペットを飼っている方はぜひチェックしてください。
・「日頃バッグに入れておいた方が良い防災グッズがあったら知りたいです」(福島県30代女性・梅こんぶさん)
・「非常時には人数分×3日分の飲料水などの準備が必要と聞きますが、実際には他に食料品や常備薬、電池やもろもろの必要品と驚くほどの荷物になり重量もかなりあるものを実際に災害が起きた際に持ち出せる自信が有りません。本当に持ち出せる大切な物ってどのように準備すればよいのか解りません」(その他60代以上女性・ohanaさん)
児玉さん 一般的に用意したほうが良いと言われているものを全て揃えるのは不可能です。用意できたとしても、人間が持てる荷物の量は男性15kg、女性10kg程度と言われていますから、それを超える量の荷物を持って避難するのは現実的ではありません。
では、何を用意すればいいのか。まずは、「自分に必要なもの」から用意するのがポイントです。例えば、常備薬やおくすり手帳、携帯用充電バッテリー、ウェットティッシュ、生理用品、タオル、マスク、雨具、ライター、ポリ袋、サランラップなどなど、緊急時にあると便利なものはたくさんあります。しかし、その中でもまずは自分が生きるために必要なものはどれかを考えてみましょう。これら以外にも水や着替え、食糧、懐中電灯、貴重品などは必ず用意が必要です。この時も、各自が無理なく持てる量を事前に確認し、自分や家族にとって「必要な量」を決めてから用意を始めるといいですよ。
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児玉さん、貴重なアドバイスをありがとうございました!
インターネット上で様々な情報が飛び交う今、「自分にとって何が必要か」という一番シンプルで大切な視点を忘れないことが必要です。3.11を通して、自分と家族に必要な防災を考えてみましょう。
新型コロナウイルスの影響により、リアルな場で「3.11」に思いを寄せる機会を設けることが難しくなっています。そこでmachicoは、行き場を失ってしまった声や想いを共有できる場になれたらと考え、中止となってしまった震災復興関連イベントの主催者の方からのメッセージをお届けしています。ぜひこちらもご覧ください。
自分に必要だと思う防災・避難グッズの中から、優先順位の高い物を2つを書き出してみよう!