東北で暮らすわたしたちにとって、忘れることのできない大切な日、3月11日。
この日は、ひとりひとりの経験や、語り継がれた出来事を振り返りながら、今を見つめる一日になることと思います。
しかし、新型コロナウイルスの影響がさまざまなところに出ている今、リアルな場で「3.11」に思いを寄せる機会を設けることが難しくなっています。
東日本大震災九周年追悼式をはじめ、多くのイベントが自粛・中止になったことで、行き場をなくしてしまった声や想い。machicoは、みんなが集うこの場が、その想いを共有できる場になれたらいい、そう考え、中止となった震災復興関連イベントの主催者の方からのメッセージをお預かりし、お届けすることにいたしました。
顔を合わせて集まることはできなくても、machicoを通してみんなの想いをつなげていく、machicoの東日本大震災9年目の3月11日です。
森羅万象のつらなり 〜海から銀河まで〜(3.11を語りつぐ会)
講演会や展示を通じて東日本大震災が残したメッセージを伝える「3.11を語りつぐ会」では、毎年「3.11メモリアル企画」を開催しています。今年は言葉でメッセージを伝えるメモリアル・メッセージコンサートを中止とし、NPO法人「森は海の恋人」活動紹介展示と古山拓水彩画展「海辺の風景~記憶の先へ~」&絵本原画展展示、仙台市天文台制作のドキュメンタリー「星よりも、遠くへ」の上映のみの開催となりました。
3.11を語りつぐ会 代表 渡辺祥子さん(アナウンサー・朗読家)より
会の活動として私たちが語りついでいこうとしているのは、「沢山の忘れたいこと、忘れたくても忘れられないことがある中の、決して忘れてはいけない大切なこと」。
扉を閉ざされたように見える中でも、実は出来る事がある。工夫してそれに取り組むことで、新たな可能性が生まれてくる。これは、3.11が教えてくれた大切なメッセージでもありました。そのことを今一度かみしめ、これからも語り継いでいくことを、改めて決意しました。
私は震災後、「被災の地で、困難の中懸命に生きた方々の姿は、未来を生きる人たちの教科書になる」という思いで語りつぎの活動を始めました。その思いは、年を経る毎に確信となっています。そして、想像もしなかった困難に見舞われた今、これまで語りついできた一人ひとりの姿が、より一層輝きを増して、私の前に立ち現れています。
震災から丸9年となる3月11日。今一度心静かに、あの時、暗闇の中にかすかに光った灯りに思いを馳せてみませんか。今なおその灯りが、自分の中にあることに気づくはずです。
画家・イラストレーター 古山拓さんより
震災前、10年近くリアスの海辺を取材していました。結果、海辺の記憶が何冊ものスケッチブックに刻まれました。その際の絵をラインナップした個展の開催数日前に、東日本大震災が発生。当時私は、失われた海辺の風景を展示することは無謀と考えましたが、画廊からの、「混乱している今だからこそ三陸の風景画展を開催すべき」との声に、開催に踏み切りました。その時の出会いと体験は、今なお私の創作活動を支える、一本の太い柱となっています。
あれから9年。再び「私の目と心が追いかけた海の記憶~海辺の風景画」を出品する機会を得、震災後に描いた被災前の風景と共に会場に展示しました。
絵は誰かが見たときに、はじめて作品として存在します。絵画は森羅万象と繋がるべく、画家が紡ぎだした物語です。そしてその物語の語り部は、実は画家ではなく絵の前で足をとめた方々です。
画家が明るさを表現する時、必ず暗さを描きます。闇があるから光は輝く。失われた三陸の記憶の風景画と「海の見える丘・絵本版」の物語が「誰か」の心に留まり、心の小さな光となることを願ってやみません。
HOPE FOR project 2020(HOPE FOR project)
若林区・荒浜で活動するHOPE FOR projectは荒浜小学校卒業生、七郷小中学校卒業生を中心とした「繋がりが失われた街に、もう一度笑顔や思いを共有するプロジェクト」です。
毎年3.11に荒浜小学校から花の種を入れた風船をとばす取り組みなどを行ってきたほか、お盆には地域の方々と一緒に灯籠流しも行っています。
HOPE FOR project 代表 髙山智行さんより
HOPE FOR projectは、震災後の毎年3月11日に、若林区荒浜地区にて、亡くなった方々を偲び、思い馳せる時間を目的として、花の種を入れた風船リリースや荒浜小に縁のある音楽演奏を行ってきました。この度、会場となる震災遺構仙台市立荒浜小学校が感染症の拡大防止のため閉館となり、やむを得ず企画中止とさせていただくことになりました。毎年、3月11日の集いの場としてご来場いただいている皆さま、共に思いを馳せる時間を作って下さっている皆さまには申し訳なく思っています。
ただ、3月11日が大切な日であることに変わりはありません。花を手向けるように空を見上げ、月日をおもう穏やかな一日になることを心より願っています。
3月11日をどこで過ごすかの選択肢の一つとして、微かな思いの行き先がこの場所にあるならば、来年も荒浜小学校でお待ちしています。
みやぎの<花は咲く>コンサート2020(宮城野区文化センター)
震災後、多くの人々の心に元気を与えてくれた復興支援ソング「花は咲く」。その名前が付いた宮城野区の市民合唱団「みやぎの<花は咲く>合唱団」は年に一度、この時期にあわせて演奏会を開催しています。
今年は3月1日(日)の開催に向けて準備を進め、東京・銀座「音プラ♪ゾリステン」の皆さんとの共演も予定されていました。
公益財団法人音楽の力による復興センター・東北 コーディネーター 伊藤みやさんより
合唱団のメンバーは宮城野区内の仮設住宅や津波浸水地域にお住まいだったシニアで、2013年から活動を始めました。『花は咲く』や唱歌などをレパートリーとし、毎年一度パトナホールで歌を披露することを目標に頑張ってきました。今回は、東京からプロのオペラ歌手をゲストにお招きして共演する予定で、ゲストの皆さんも仙台のお客様を楽しませようと豪華なプログラムを準備してくださっていました。残念ながら中止となってしまいましたが、時機を改めてこのコンサートを実現したいと考えています。
『花は咲く』を練習していると、今でも涙が出てくることがあります。私たちは歌うことで自分たちを励まし、誰かに聴いていただくことで勇気をもらってきました。歌の持つ力をみなさんと共有できるよう、歌に磨きをかけたいと思います。
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経験と教訓は、今を生きる自分たちが前を向いて歩くための力にもなります。
また、今、様々な自粛や制限の中で、戸惑いながら過ごしている方も多いことでしょう。頑張る気持ちをひとつに、今を乗り越える方法を、machicoも考えていきたいと思います。
そして、今回ご紹介したのは中止になってしまったイベントの中のごく一部にすぎません。日々状況が変化する中で、お声がけできなかったイベントもたくさんありました。ぜひ、イベント主催者のみなさまの声もコメントに寄せていただき、想いを共有する場としてmachicoをご活用ください。
machicoでは、2012年から震災に関する意識調査を毎年実施しています。2020年のアンケート結果発表とあわせて、今年は防災のプロに伺ったお話もご紹介しています。3.11を振り返りながら、防災についても改めて考えてみませんか?
3.11から9年、あなたの今の想いを教えて。