今回のmachico防災部は、時間や場所を選ばずに学べる「防災eラーニング講座」を紹介します。
防災の一歩は「知ること」から。宮城県がWebで公開している「防災eラーニング講座」は、「いつでも」「どこでも」「自分のペースで」気軽に防災の基礎知識が学べる動画ツールです。今回は、東北大学災害科学研究所の保田真理先生と宮城県防災推進課の阿部正宏さんに、防災意識や動画の目的を伺い、編集部が実際に「防災eラーニング講座」を体験しました。
今回教えてくれたのは…
東北大学災害科学研究所 研究講師 保田真理先生
防災意識の啓蒙や防災教育の研究・発信を専門分野とし、小学校を中心に出前授業を展開。災害発生時、状況に応じた行動をとるには小さい頃からの防災教育が大事なことから、これまで国内外の約430校で授業を行っています。
復興・危機管理部防災推進課地域防災班 阿部正宏さん
復興・危機管理部は、事前防災の取り組みと災害発生後の初動対応、中長期の支援、そして、災害経験の伝承や次の緊急時への備えなど、一連のサイクルを担う専門部署。その中で防災推進課は、主に事前の備えと初動対応を担当しています。
「世の中に防災の情報はあふれていますが、例え知識があっても、いざというとき的確に行動できなければ意味がありません。そのためには、日ごろからイメージトレーニングを行い、自分の考えを持った上で行動することが大切です」と保田先生。
防災と一言で言っても、住む場所や家庭環境が異なれば、災害リスクや必要な備えも変わります。「東日本大震災後、新たな堤防ができ、道路が新しくなり、まちも整備されています。“だから大丈夫”と思いがちですが、私たちの想定を超えてくるのが自然。そのとき自分がどう行動するか、改めて考える機会をつくってほしいと思います」(保田先生)。
そのきっかけとしておすすめしたいが、宮城県がリリースした「防災eラーニング講座」です。講座には10のコンテンツがあり、1本5~10分程度の短い動画で構成されています。日常生活の隙間時間や、バス・電車での移動中など、気軽に視聴できて繰り返し確認できるのが魅力です。
「防災eラーニング講座」を主導したのは、宮城県の防災推進課。県では10年以上にわたって防災指導員や防災リーダーの育成に取り組み、これまで1万人以上が認定を受けました。その一方で、参加者が60歳以上の男性に偏っており、女性や現役世代の少なさが課題に。
「これまでの防災講座は、決まった日時と場所で開講していましたが、仕事や子育てで忙しい現役世代は、指定通りに集まることが困難です。講習会に高齢の方が多いことも参加しづらい理由の一つ。そこで、好きな時間に好きな場所で見ていただける新たなツールの必要性を感じました」と阿部さん。その結果、若い世代に親和性が高く、パソコンやスマートフォンで簡単に学べるeラーニングに辿り着いたそう。学べる内容は防災知識の「基本のき」ですが、やりがいを感じながら学んでほしいと、名称にあえて「講座」と付けました。
「防災について目に触れる機会が多いほど、災害時の行動イメージが定着します。そうすれば、緊急時も自分で判断してすぐに動けるはずです。気軽に利用できるeラーニングは、防災を学ぶのにぴったりのツールだと思います」と保田先生も太鼓判を押します。
「防災eラーニング講座」では、問いかけの場面に「あなた」の言葉を使っています。製作に携わった保田先生は、「動画に出てくるさまざまな場面を、自分事として捉えてもらうため」とその理由を話します。事前の備えがしっかりしていなければ、実際の場面で円滑に行動できません。自分の環境と照らし合わせながら考えることで、必要な準備を整えることができます。
また、「同じ災害でも、地域や避難者の年齢層などによって運営が異なりますし、現場での創意工夫が必要です。女性はソーシャルスキルの高い人が多いので、防災知識を学んだ上で、安心・安全な避難所運営にぜひ貢献してほしいですね。」と、eラーニングで基礎知識を身に付けることで、災害時の避難所運営に自信を持って関わることができるとお話されていました。
「防災eラーニング」を視聴するには、申請フォームからの申し込みが必要です。最後まで見た人には修了証の発行もあります。
阿部さん:「ご自身の命と大切な人の安全安心を守れるように、このツールを利用していただきたいですね。これを機に防災への関心が高まり、防災指導員や防災リーダーといた次のステップに進む方が増えることにも期待しています。」
保田先生:「自助共助公助という言葉が一般的になっていますが、変に線引きせず、いざというときは周りと協力し合うことが大切です。そのために自分はどうするか、eラーニングでヒントを得て自分なりの答えを考えてみて欲しいです。」
実際にeラーニングをやってみると「想像してください。」という言葉が最初に入っていて、自分の生活を思い浮かべながら視聴することができました。スライドが一枚ずつ切り替わるので、しっかりと自分で考える時間も持つことができます。
ぜひみなさんも自分の防災対策について、考えることから始めてみませんか?詳しい利用方法はこちらから!
防災eラーニングを受けてぜひアンケートにご協力お願いします。
皆様からのアンケート結果をもとにより良い講座となるよう見直してまいります。
よろしくお願いいたします。
「machico防災部」の活動は、せんだいタウン情報machicoが
震災10年目を機にスタートさせた「つながるプロジェクト」の一環です。
防災について、普段学ぶ機会はありますか? eラーニングをやってみた感想もお待ちしています!