飯舘村は、阿武隈山系北部に位置する自然豊かな村です。年平均の気温が約10度という高原地帯特有の冷涼な気候の中で、たくさんの美味しい作物が育ちます。
前回飯舘村を訪れたのは昨年の秋頃。生産者たちを巡り、手塩にかけて育てられた食材を、仙台で人気のカフェレストラン「Route 227s' Café」のシェフが美味しくアレンジするというコラボレーションにより、たくさんの宮城県民のみなさんに飯舘村を「食」を通して旅してもらいました。
飯舘村にはまだまだご紹介したい食材と信念をもって村を愛する生産者がいます。そこで、今回は緑が眩しい5月に飯舘村へ。7月に開催される「いいたてフェア~夏~」で使用される食材の生産現場を訪れ、食材の特徴や美味しさの秘訣をお聞きしました。仙台地下鉄勾当台公園駅すぐの「Route 227s' Café」で7月に食べることができる生産者とシェフのコラボメニューも掲載中ですので、事前にチェックして足を運び、飯舘村の食の恵みをご堪能ください。
●村へ移住した店主が営む人気のベーグル屋さん「村カフェ753(なごみ)」
●2024年7月、期間限定!「いいたてフェア~夏~」オリジナルメニュー紹介
夫婦で農業を営む高野笑子(えみこ)さん
高野家は代々続く農家。高野さんご夫妻は6代目に当たり、旦那さんの適確な判断で震災後もチャレンジングな農業を展開されていました。
高野さんが育てているミニトマトの品種は「エコスイート」。もともと糖度の高い品種ですが、土壌が整っていることでより甘みが増します。「エコスイート」は赤色と黄色があり、高野さんが作る赤色のトマトは甘みが強く子どもたちがおやつで食べるほど。黄色はあっさりしている味でトマト嫌いの人でも食べてしまう美味しさです。6代続く農家の整備された土壌と技術が美味しさを引き出しているようです。また、高野さんご夫妻は、飯舘村の農業の継承を目的に、地元小学生にトマトの収穫体験の場を提供されています。
色づくのを待つだけの状態に育った5月末取材時のミニトマト「エコスイート」。
「エコスイート」はミニトマトとしてはやや大きめ。4月に苗を植え、丁寧に管理されて2、3ヶ月で甘くて美味しいミニトマトが出来上がります。ハウス栽培で育ったミニトマトの収穫の時期は、その年の気温によって変わりますが、昨年は6月下旬から霜がおりる11月初めころまでと長期間収穫されていました。
震災前は米と畜産を手掛けていましたが、苦難を乗り越え、研究機関が土壌を検査し安全性も確認できている現在は、ミニトマトの他、しいたけやうずらなど新しい食材作りに取り組んでいます。特にこれから力を入れていきたいと話すのはうずらの卵。
飼育小屋の中で分けられて管理されている孵化した時期が同じうずら
うずらの肉はフランス料理では高級食材として食されています。私たちの食卓に食肉として登場することはなかなかありませんが、うずらの卵が乗っている料理はなんだかうれしい一品ではないでしょうか。現在は地元の道の駅でしか販売されていない高野家のうずらの卵ですが、今後は飲食店や家庭で食べることができそうです。
えごま生産者のいいたて結い農園 三瓶政美さん(左)と長正増夫さん(右)
地元では、えごまを食べると10年長生きすると言われ、えごまではなく「じゅうねん」と呼ばれています。えごまは、必須脂肪酸で現代人に不足しがちなαーリノレン酸を豊富に含むことは、今でこそ健康意識の高い方によく知られていますが、飯舘村では古くから身体に良い食べものとして代々受け継がれ食されてきました。
「東北復興宇宙ミッション2021」で宇宙を旅した種から育った、5月末取材時に芽を出したばかりのえごま。
機械を使わず、すべて手作業で作られている「いいたて結い農園」のえごま。「結い」とは支え合うことを意味し、「いいたて結い農園」は、震災後に飯舘村に戻った高齢者のみなさんが生き生きと働く貴重なコミュニティーの場となっていました。えごま栽培だけでなく、地域の草刈りや田んぼ仕事など、顔を合わせることを大切に高齢者が孤立しない場を作られています。
「いいたて村の道の駅までい館」で販売されていた、「いいたて結い農園」の「笑ごま」油と「笑ごま」の実。ネットでも販売中。
「いいたて村の道の駅までい館」の飲食ブースでは、地元の食材を使ったメニューが多く、今回は「いいたて結い農園」のえごませいろとえごまのソフトクリームをいただきました。
えごませいろは、えごまの香ばしさを感じる濃厚なタレと細めのそばの相性抜群。夏の時期にぴったりな美味しくて栄養もある一品。えごまソフトには、ミルクたっぷりのソフトクリームにえごまの実がふりかけられていて、つぶつぶ食感がクセになる美味しさでした。「笑ごま」の実はめんつゆなどのタレとの相性が良いとお聞きし、健康も意識して自宅用に購入しました。
えごませいろ
えごまソフト
インゲン生産者の末永瑞夫さん
飯舘村は元々インゲンの名産地で、ブランド品として高値で取引されていたほど品質が良く、震災前は150戸の生産農家がいたのですが、現在は10戸に満たない数に減少してしまいました。しかし、末永さんは味が良いと評価の高い飯舘村産のインゲンを食べたいと言ってくれる人がいるから、未だ苦難もありながら震災後も生産を続けているそうです。
いいたてフェアの7月に収穫の時期を迎えるインゲン
現在生産しているのは、インゲンの品種「鴨川グリーン」。家庭では、天ぷらと茹でてにんにく醤油で食べるのがおすすめだそうです。インゲン栽培は、成長段階の蔓の向きの調整やインゲンの太さを見極めながらの収穫など、栽培から収穫まで、一日も休むことなく手塩にかけて育てられていました。
「飯舘産黒毛和牛」畜産家 株式会社ゆーとぴあ 山田豊さん
山田さんは震災後の避難先の京都で精肉店「中勢以」に就職し、約5年間をかけて肉の目利き、肉を切る技術、好みに合わせた肉の売り方などを学ばれてきました。飯舘村に戻り自分の肉を売る精肉店を持つという目標が生まれ、現在は畜産家でもあり精肉店の経営者でもあります。山田さんが京都で学んでいる期間、お父様は避難先である福島県中島村、福島市で牛を飼い続けていたそうです。
贅沢な「飯舘産黒毛和牛」を食べることができる「いいたてフェア」は貴重な機会です。ぜひ旨味をご堪能ください。
また、取材当日は「いいたて村の道の駅までい館」の飲食ブースで「肉のゆーとぴあ」の「飯舘産黒毛和牛」を使った牛皿定食とハンバーグカレーが提供されていました。道の駅で気軽に黒毛和牛を食べることができるのも飯舘村へ訪れたからこそ。飯舘村へ旅する際は、使用している生産者や食材を見てメニューを選ぶことができる「いいたて村の道の駅までい館」へ立ち寄ることをおすすめします。
飯舘産黒毛和牛 牛皿定食
飯舘産黒毛和牛ハンバーグカレー
村カフェ 753 店主 田中久美子さん
今回の「いいたてフェア」では食べることができないのですが、人気のベーグル屋さんがあると聞いて立ち寄った「村カフェ 753」。飯舘産のフルーツなどを積極的に取り入れたたくさんの種類のベーグルを100円台や200円台で販売されています。お店の隣にはブルーベリー畑が広がり、収穫時期には摘んでベーグルに利用しているそうです。
そんなベーグルを手掛ける田中さんは神奈川県で医療に従事していた経歴を持ちます。田中さんは「飯舘村の人たちとのご縁で今に至る」と話します。飯舘村と村の人々に元気をくれる笑顔が印象的でした。
中に入ると吹き抜けの天井の空間が広がり、お店の周りの木々を見ながら一息つけるイートインスペースがあります。(配達のない日だけイートインOK)
いいたて佐藤いちご園 佐藤さんご夫妻
一般的に12月から5月頃に収穫されるいちごと異なり「すずあかね」は、7月から12月頃に収穫ができるいちごです。「いいたて佐藤いちご園」では、ハウスでのEM農法による栽培で、「すずあかね」の旨味と品質を実現しています。EM農法とは、微生物の力を活用して土壌や作物を健康に保つ農法のことをいいます。EM農法といっても一律ではなく、佐藤さんは日々作物の状況をみながら微調整をして栽培されていました。また、「息子が農園を継いでくれることになったんだ」と話すご夫妻の笑顔も見ることができました。
「すずあかね」は甘さだけでなく程よい酸味もあり、甘くて爽やかな美味しさ。形状がまん丸なのも特徴のひとつです。酸味があることで果肉の痛みも少なくなり日持ちがすることと、酸味は生クリームとの相性がよく、形も丸くかわいいことから、ケーキ屋さんでの利用が多いそうです。もちろん、そのまま食べた「すずあかね」も絶品でした。
7月からの収穫のピークを前に、蜂たちが一生懸命受粉してくれていました。
【提供期間】2024年7月1日(月)~31日(水)
【使用食材】飯舘産いんげん(末永瑞夫さん)
夏らしく爽やかな風味のレモンクリームにうま味のある生ハムと旬のいんげんを合わせました。
※ランチタイムのみサラダとドリンク付き
【使用食材】飯舘産黒毛和牛(ゆーとぴあ 山田豊さん)、えごまソース(いいたて結い農園)、ミニトマト、うずらの卵のピクルス(高野笑子さん)※不定期食材となります
飯舘産の黒毛和牛の入った自家製のメンチカツに旬のとうもろこしの洋風おこわやお総菜など、飯舘の食材にこだわったプレートです。
※ランチタイムのみドリンク付き
【使用食材】夏いちご“すずあかね”(いいたて佐藤いちご園)
飯舘の夏いちご“すずあかね”と、すっきりとしながらもコクのあるチョコレートケーキをお楽しみください。
生産者さんが愛情を込めて育てた食材への想いを、私達がいかに丁寧に調理し、お客様に伝えることが出来るのかを考えながら完成したメニューです。 知って、食べて、楽しんでもらい、飯舘村に興味をもっていただけるようなフェアになればと思っています。
同じ想いを持つ生産者さんとの最強タッグ。
美味しくならない筈がありません。
公式サイト | https://www.vill.iitate.fukushima.jp/ |
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