明日災害が起こるかもしれない!なんて言われても、なかなか実感がわかないし、つい後回しになってしまうのが「防災」。「備えよつねに。」を合言葉に防災力アップを目指すmachico防災部では、楽しみながら防災を学び・身につけることができる防災サバイバルキャンプを実施しました。
キャンプにチャレンジしたことがない方でも手軽に身につけられる知識が満載。趣味にも、いざという時の備えにも活きてくる、実りある1泊2日となりました。
川崎町の完全貸切キャンプ場「AONE×MATKA」を会場に5組の家族が集まりました。
この企画は、「災害文化」の創造・発信を目指す仙台市との共同事業です。
「災害文化」とは、災害は発生するという認識のもと災害に備え、乗り越える様々な知恵やスキルの総称。いつどこで起こるかわからない自然災害から生き延びるためには、日頃から災害時のリスクを想定し、命を守るための意識や行動を身に付けておく必要があります。仙台市では、この「災害文化」を市民の皆さんと一緒に深め、広く発信する取り組みが始まっています。
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今回教えてくれたのは…
「自然学校キッツ森のようちえん」「AONE×MATKA」スタッフ 小野俊介さん
宮城県仙台市・福島市・郡山市を中心に自然体験活動を行う「自然学校キッツ森のようちえん」や、完全貸し切りのキャンプ場「AONE×MATKA」のスタッフとして、子どもから大人まで幅広い年代に向けてアウトドアやキャンプの楽しさを伝えている。幼稚園や保育士資格を持つ。子どもたちからは「スケさん」と呼ばれて親しまれている。
イラストレーター ico.(いこ)さん
宮城県出身、福島県在住のイラストレーター。東日本大震災や令和元年東日本台風(台風19号)など数々の災害にあった経験から、自身の被災体験や防災知識をイラストや漫画作品にし、福島市内で初めての防災イラスト展を開催。地域の防災教室などにも講師として参加している。防災士の資格も持つ。
最初のプログラムは、宮城県名取市出身のイラストレーターico.さんによる講話「災害時に必要なモノ・コトって何?」。名取市内で被災した東日本大震災の経験や、その後、福島に移住した後に体験した台風や豪雨、地震災害の教訓をイラストでわかりやすく発信する活動をされています。はじめにico.さんが「東日本大震災の経験をお子さんに伝えていますか?」と問いかけると「話してはいるけど、伝わっているかな」と自信なさげなご家族も。
参加者にico.さん自身の経験則などが詰まった「被災シミュレーション もしもすごろく」が配られると、子どもたちは興味津々でのぞき込みます。地震発生後の安全確保、避難生活に必要な心構えや対応を時系列で学べるこのすごろくを使って、レクリエーションに移ります。
レクリエーションでは、手元のすごろくとそっくりだけど、よくみると間違った行動や対応が描かれたシートを用意して、間違い探しにチャレンジしてもらいました。
すごろくを通じて、災害時は電気が止まるため信号や機械式の駐車場が使えないことや、倒れてきそうな家具は支えるのでなく、その場から離れることが命を守る正しい行動であると学び、楽しみながら防災意識が高まった様子でした。最後にico.さんは、家族で災害時の対応や集合場所などを決めておくこと、そして、それを繰り返し話し合うことが何より大切だとお話しされていました。
防災への意識が高まったところで、参加者たちは会場となったキャンプ場AONE×MATKAの体育館へと移動。テントの張り方や災害時にも役に立つアウトドアグッズの使い方について、インストラクター小野さんから説明を受けます。
キャンプ初心者がほとんどの今回のイベント。興味津々でテントの張り方を学んでいました。
「いざというとき、役に立たないキャンプグッズはありません」と小野さんは言います。例えば、震災で電気が使えなかった寒い夜に、寝袋はとても役に立ったと自身の経験を交えて教えていただきました。
電気やガスが使えない時に、どうやって灯りやエネルギーを確保するか、その答えも、キャンプグッズの中に詰まっていました。
市販のカセットボンベで灯りや暖を取ることのできるランタンや、ホワイトガソリンを使った本格的なものまで。全て非常時にも役に立つアウトドアグッズを紹介する小野さん。
寝る場所とエネルギーの確保の方法を学んだところで、参加者が挑戦したのはサバ飯(サバイバル飯)づくり。非常時は水の確保が難しくなるため、少ない量の水で調理をするのがサバ飯のポイント。今回は水を節約したカレー作りに挑戦しました。
はじめに、ポリ袋にお米と同量の水を入れ(※1袋1合が目安 ※ポリ袋は食品用の耐熱性のもの)、なるべく空気が入らないように絞ってから、ご飯が炊けて膨らむ容量を残すように上の方で縛ります。
具材は食べやすいサイズに切って、水と一緒に袋(※お米の袋とは別のもの)に入れて縛ります。水の量は、市販のカレールーの外箱に記載してある量よりも少なめ(水分蒸発がないため。今回は規定量の2/3程度)に。
具材の袋とお米の袋がすっかり水に浸るように鍋に水を張り、火をつけて沸騰してから20分ほど煮ます(鍋に張る水は直接口に入ることがないので、川の水を使用したり、再利用したりしてもOK!)。ご飯が炊けてきたタイミングで具材の袋にカレールーを入れ、カレールーが溶けるまで袋の中で煮たら、完成!災害時にもぴったりな調理法です。
自分たちで作ったサバ飯を食べ、「すごい!本当に炊けている!」「これなら家でもできそう」「洗い物も少なくて済むね」と声を上げる参加者の皆さん。資源の限られた状況でも、おいしい食事を確保できる「サバ飯」について学び、大満足の様子でした。
夜は更け、小野さんに教えてもらったランタンなどを囲みながら、1日の学びについて振り返る夜の時間。「あの日の夜もこんな薄明かりの下で過ごしたんだよ」と、ico.さんの講話を受けて早速震災の体験について子どもに共有するご家族もいました。
子どもたちは焼きマシュマロやキャンプ場に置いてあるボードゲームを楽しみながら、どんな状況でも、準備と知識があれば楽しく快適に過ごすことができることを学んだキャンプの夜でした。
2日目の朝ごはんは、火の回りが早いフライパンを使って、ガスを節約するサバ飯炊き込みご飯。前日の夜から水に浸しておいたお米を使って作ります。
浸しておいたお米の水を切ったら、具材(今回はニンジンとしめじ、保存のきく焼き鳥の缶詰を使用)と一緒にフライパンに入れます。そこに、お米と同量の水を入れ、中火で火にかけます。水が沸騰したところで蓋をして、少しだけ火を弱めてから15分〜20分ほど煮込みます。蓋を開けて、水がフライパンのフチに少量だけ見える程度になったところで、強火にして水を飛ばします。水が飛んだところで、火を止めて再び蓋をして数分蒸らしたら完成です。
想像以上に簡単で、想像以上に美味しく出来上がった炊き込みご飯に舌鼓を打ち、よい1日のスタートを切ることができました。
「災害への備えも、キャンプも、いつかやろうと思いながら後回しにしていたので、いいきっかけになりました」
「子どもたちも楽しそうにしていて、防災という真面目なテーマだけど色々学んでくれたみたいです」
といった声が聞かれた今回の防災キャンプ。どんな状況でも知恵と工夫でたくましく生きる術は、キャンプやアウトドアの醍醐味ともつながることを実感しました。
楽しみながら、もしもに備え、備えながらサバイバルを楽しむ。そんな循環が生まれると、災害に備え、乗り越えるスキルや考え方はもっと身近なものになるかもしれません。みなさんも、キャンプを通じて「災害文化」に触れてみませんか。
今回の体験の様子は、仙台市の災害文化事例ポータルサイトでも公開しています。合わせてチェックしてくださいね。
「machico防災部」の活動は、せんだいタウン情報machicoが
震災10年目を機にスタートさせた「つながるプロジェクト」の一環です。
いざという時に役立つサバイバル術や暮らしの知恵を教えて。記事の感想もお待ちしています。