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2023年09月27日
保存料を使わずに長期・常温保存ができる!革新的な笹かまぼこの誕生秘話。
体験!発見!三陸の海を知って味わい尽くす旅へ ~水産Open Factory~ 南三陸編

体験!発見!三陸の海を知って味わい尽くす旅へ ~水産Open Factory~ 三陸・南三陸編

体験!発見!三陸の海を知って味わい尽くす旅へ ~水産Open Factory~ 三陸・南三陸編

子どもの頃に行った工場見学や社会科見学。働く人たちの姿や商品ができるまでの工程を現場で見たあのわくわく感を体験することができる「大人の工場見学 Open Factory」をご紹介します。

今回訪れたのは、宮城県南三陸町です。三陸の「水産」Open Factoryでたっぷり学び、味わい、堪能してきました。みなさんも今の三陸の海を知り、製造の現場を見て、その土地の食を味わう「大人の工場見学」の旅へでかけませんか?

 

南三陸を愛し、「及善商店」が代々紡ぐかまぼこの歴史

株式会社及善商店 5代目及川善祐会長と6代目及川善弥社長

今回お話をお聞きしたのは、創業明治13年の及善蒲鉾店を営む、株式会社及善商店 5代目及川善祐会長(写真右)と6代目及川善弥社長(写真左)のおふたりです。

東日本大震災ですべてを失っても、町に尽くしたいと南三陸に戻り、先祖から受け継いできた日本の誇れる伝統食品「かまぼこ」の食文化を次世代に伝えていくことを理念に邁進している歴史を紡ぐ企業です。

及善商店 4代目の想いを引き継ぎ誕生した笹かまぼこ「リアスの秘伝」は、農林水産大臣賞を受賞し、日本一の笹かまぼこという称号を得たロングセラー商品となりました。
 

リアスの秘伝02

「リアスの秘伝」は、高級魚の吉次(キンキ)と厳選したスケソウダラを混ぜて焼き上げた、厚焼きの最高級笹かまぼこ。※要冷蔵

 

保存料を使わずに常温保存を可能にした、お土産にぴったりの笹かまぼこ。

遠方に旅にでるとき、宮城の笹かまをお土産にしたくても、冷蔵商品の笹かまを手持ちのお土産にすることは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

今年で創業140年の及善商店は、長年の技術を駆使し、保存料不使用で常温・長期保存が可能な笹かまぼこを誕生させました。その革新的な技術を保持し、販路を拡大しています。

この商品を生み出した6代目 善弥社長に、商品誕生までのお話をお聞きしました。
「常温保存にチャレンジしてきた他の同業者からは『技術的に無理だ。できたとしても美味しくないからやめておけ...』と言われました。腐敗の原因となるのは菌。加熱処理だけでは死滅しない菌がいたり、熱すると真空のビニールが変形したり、笹かまの身がぐにゃぐにゃの食感になったりと、試行錯誤の日々。しかし、できないはずはないとあきらめることはありませんでした。」

「そこで、みんなができなかったことをやろうと気仙沼で100年以上続くライバルのかまぼこ会社『かねせん』さんと新会社 『三陸フィッシュペースト株式会社』を設立。双方の100年以上のレシピと技術を持ち合わせて協力した結果、保存料不使用で長期常温保存が可能なプリプリ食感の美味しい笹かまぼこが完成しました。失敗も考察も2倍でしたが、成功につながりました。」
 

常温保存かまぼこ
 

「そのおかげで、販路も拡大。お土産としての売上増はもちろん、委託先のブランドでオリジナルの笹かまぼこを生産するOEM事業も手掛けています。例えば、動物園では、いろんな動物がパッケージになった常温の笹かまが販売されているんですよ。」

 

原材料はシンプルに。加圧加熱殺菌が常温保存を可能に。

私たち消費者は、保存期間がとても長い商品をみると、たっぷりの保存料が入っているのではないかと買うことを躊躇することがあります。しかし、及善商店が手掛ける常温・長期保存が可能な笹かまぼこの原材料はいたってシンプルでした。

では何故、長期・常温保存が可能になったのか、お聞きしました。
「試行錯誤する中で、食感を悪くしていたのは、現代の添加物や副原料であるという結論に導かれました。かまぼこの歴史を辿ると900年前に遡ります。昔は、魚の身と塩だけでかまぼこが作られていたので、それに近いかまぼこで作った結果、耐熱効果があり、プリプリの食感も感じられることがわかりました。そこで、添加物などを抜き去り、良い原材料でシンプルなかまぼこ作りをしていきました。」

まさに研究者のような探求心で、安全で美味しい新商品は誕生していました。しかし、原材料を変えるだけで長期・常温保存は可能になるものでしょうか。善弥社長のお話は続きます。
「加工技術の秘密は、『加圧加熱殺菌』です。これまで、真空包装でも賞味期限は冷蔵で1ヶ月でした。真空包装にして酸素が無くても生きる菌がいるんです。しかし、圧力釜の原理で加圧加熱殺菌処理をすると、世界中にいる菌が生きられない状況になります。菌がいない状態の真空包装なので、実は2年間食べることができるのですが、賞味期限が長すぎると、消費者の方から怖がられるので、90日程度(約3ヶ月)と表記しています。」

900年というかまぼこの歴史を重んじ、次世代へかまぼこの伝統を継承しようと、確固たる理念を持った企業の熱い思いが、安全安心で革新的な商品を生み出していました。

及善商店外観
 

 

体験ツアー参加者のみなさんと一緒に、大人の工場見学へ。

及善商店では、製造ラインをガラス越しに見学することができます。地元の小学生の工場見学だけでなく、問い合わせをすれば、一般の方も2名から工場見学を受け付けています。

体験ツアーイメージ  

先にも書いた通り、かまぼこの歴史は900年前。木の串に魚肉をつけてあぶって焼いたのがかまぼこの原点。
900年前の昔も今も、かまぼこを作るためにずっと変わらず必要なもの、それは「塩」。及善商店の笹かまぼこの主な原材料の魚種は、北の冷たい海で獲れるスケソウダラ。白身魚は、タンパク質の筋原線維が多く、水には溶けないのですが、塩で溶ける性質があります。塩で溶けた身を練ることで、パサパサな身からねっとりした身になり、それを形作って素早く焼くと笹かまぼこが出来上がるのだそうです。
 

かまぼこ製造イメージ

魚肉は、杵と臼を使って練り上げられます。形を作って焼き上げる機械は、メーカーの特許商品。各かまぼこ屋によって、生産量も違うので、ラインのスピードや長さもカスタマイズされています。
 

かまぼこ製造イメージ

及善商店では、30メートル位のラインを往復して迂回し、火のトンネルであぶられて、焼き上げられた笹かまぼこが出てくる仕組み。機械だけでなく、最後に人の目でもチェックされ、商品として市場で販売されます。
 

タコ入りの笹かまぼこ

この日は、タコ入りの笹かまぼこを製造中。実際に焼き立てを食べさせていただきました。一般的な笹かまぼこより弾力が強く、プリプリもちもちの食感でした。
 

「細工かまぼこ」

「細工かまぼこ」

伝統のかまぼこ「細工かまぼこ」全30種類はすべて手作り。作れる職人が少なくなっている為、日本の伝統工芸として残したいという思いから、動画を制作中。伝統を学ぶことによって、次の世代の新商品の開発につながると考え、日本かまぼこ協会への寄贈を予定しているそうです。
 

 

南三陸を知る・繋ぐ

仙台市街から南三陸町までは、車で約1時間半。東日本大震災後、何度も訪れている町です。共通して感じるのは、お話しさせていただく地元の方の笑顔がとても強く優しいこと。今回お会いした及善商店 5代目及川善祐会長と6代目及川善弥社長 親子も、包み込むような笑顔で迎えてくださいました。

及善商店 5代目及川善祐会長は、後世に繋ぐ、書籍「名を惜しめ」と音声を残しています。
 

~その一節より一部抜粋~

2011年3月11日、東日本大震災。マグニチュード9.0。
チリ地震の記憶。

畑の中の道を駆け上がる。
煤煙を上げながら、波が堤防を越えてくる。
火がついたままの家が流れていく。
生まれ育った町が流されていく。わずか10分の間に。

3月14日、善祐・善弥 親子は、高台から瓦礫に埋もれた志津川の町をみていた。
俺の代で及善を途絶えさせていいのか。「やるか。」
「やりましょう。」息子が海を見ながら答えた。

及善商店は、2011年の秋には及善商店初代からお付き合いのある登米市に場所を借り、笹かまぼこの製造を再開。そして6年後、故郷南三陸町に戻り、現在に至っています。

あきらめないこと、繋ぐことの大切さを学ぶことができる及善商店での「水産 Open Factory」は、水産業界で働く人はもちろん、未来を担う若い企業人にとって、とても貴重な体験になると感じる旅でした。

 

一望景色

工場見学をした後は、被災した防災対策庁舎に手を合わせ、後世に伝え継ぐために建てられた南三陸町東日本大震災伝承館「南三陸311メモリアル」へ。いつ発生するかわからない自然災害の恐ろしさ。私たちはその時どう行動すればいいのか、住民の方の証言映像を拝見しながら、自分自身のこととして自然災害について学び合う「ラーニングプログラム」にも参加してきました。

メモリアル1

メモリアル2

 

帰りはもちろん、「南三陸さんさん商店街」で地元の新鮮な海産物をたっぷり堪能しましょう。

ランチ丼

たこ

 

ご紹介した農林水産大臣賞を受賞した日本一の笹かまぼこ「リアスの秘伝」や常温保存可能な笹かまぼこは、南三陸さんさん商店街の中にある及善商店でも販売中です。

商品

 

公式・ショッピングサイト

 

 

 

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