子どもの頃に行った工場見学や社会科見学。働く人たちの姿や商品ができるまでの工程を現場で見たあのわくわく感を体験することができる「大人の工場見学 Open Factory」をご紹介します。
今回、岩手県宮古市と宮城県塩竈市で、三陸の「水産」Open Factoryをたっぷり堪能してきました!今回は三陸・宮古編の体験記をお届けします。みなさんも今の三陸の海を知り、製造の現場を見て、その土地の食を味わう「大人の工場見学」の旅へでかけませんか?
今回お話をお聞きしたのは、「イカ王子」こと共和水産株式会社 代表取締役専務 鈴木良太さん。
「宮古を水産で盛り上げたい」という地元への熱い思いから、宮古市内の若手事業者と得意分野を活かしながら宮古の水産に注目が集まる商品を開発しています。開発商品のひとつである「王子のぜいたく至福のタラフライ」は宮古の真鱈を全国にPRした人気商品となり、ネット販売で売切れになるほど。 また、自ら広告等となって「イカ王子」として王冠をかぶり、子どもたちへの食育授業やメディアへの出演もされている地元愛に溢れるオピニオンリーダーです。
宮古港は、沖合に豊かな三陸漁場を持つ漁場基地として栄えてきました。
しかし、今年(2023年2月時点)はさんま、秋鮭、スルメイカと宮古を代表する魚が全て不漁。売上にも大きな影響を及ぼしています。また、温暖化の影響で獲れる魚が変わってきているのは三陸の漁場だけの話ではなく、加工する水産物にあわせた設備投資等、漁業・製造・加工業のみなさんは試行錯誤を重ねています。
そんな中でも、共和水産の鈴木専務はこう話します。
「宮古の漁獲量が減っても、一般消費者にはあまり影響はないと思うんです。流通が発達している日本のスーパーの棚は外国の魚で埋まっていますし困ることはない。でも、地元の海の貴重な資源を大切にして、お客様が求める商品作りをしています。しかし、お客様のニーズを考える際に大切にしているのは、『自分が美味しいと思うもの、自分があったらいいなと思うもの』を基準にすること。大変なこともたくさんあるけど、常に港町、三陸・宮古の愛される新しい商品を楽しみながら考えています。」
「コストパフォーマンスのいい美味しい加工食品が大好きなんですよ」と話す鈴木専務。「宮古の新鮮な魚は本当に美味しいし、是非来て食べてほしいけれど、お客様が求める優先順位は違う」と考えているそうです。家庭やお店で揚げてすぐ食べることができる、且つとても美味しいモノ。そう考えて開発されたのが「王子のぜいたく至福のタラフライ」。その美味しさの秘訣は、宮古の新鮮な真鱈と「ワンフローズン」という加工技術です。
「ワンフローズン」とは1回のみの凍結の事で、食品では凍結が少なければ少ない程、鮮度が良いと言うことになります。「王子のぜいたく至福のタラフライ」は、水揚げされてすぐの刺身でも食べられる新鮮な真鱈を捌いて骨抜きし、切り身にして小麦粉とパン粉をつけてた後、 1回だけ凍結されます。後は揚げるだけ。また、真鱈は水分量が多い魚なので、つなぎになる卵や乳を使う必要のないフライにぴったりの魚。アレルギーのある方でも安心して食べることができます。
鈴木専務は「これって水揚げされる産地でなければできない商品。自分は宮古の真鱈でしか作れないものを考えて、地元を元気にしたいんですよ」と話されていました。イカ王子として精力的に県内外でPRを行い、東京でのイベントでは1日でなんと780食を販売。「宮古の真鱈まつり」では実行委員長を務めています。
取材をして、「水産Open Factory」は単なる工場見学でなく、地元の水産業を純粋に愛し、統率しながら地域に貢献する代表の思いを知ることも醍醐味だと感じました。
「HACCAP」とは、食品の安全を確保するための衛生管理手法のことを言います。
共和水産の創業からの代表商品は「いかそうめん」。(イカ王子の名称の由来がここでご納得いただけたと思います)宮古で水揚げされたばかりのイカを急速冷凍。新鮮で甘みのある「いかそうめん」は全国の食卓へ届けられています。
港町である宮古の家庭の朝食にはイカ刺が並ぶそう。
消費者のニーズを考えて開発された、納豆やオクラなども混ぜて食べられる3個セット個包装のいかそうめん。
その製造元の共和水産株式会社 藤原工場は「HACCP」認定工場です。鈴木専務は「安心安全の品質管理は当たり前。その上でニーズのある商品を提供しています」と話します。食品の品質管理で一番ハードルの高い製品が生食用です。共和水産の「いかそうめん」は、吟味して買付した原料のみを用いて、工場内に細菌検査室を設け、製造ロット毎に細菌検査と官能検査をする事で自社基準をクリアした商品のみをお客様のもとに出荷しています。殺菌は薬品臭が一切しないオーガニックな電解微酸性水を使用しているそうです。
帽子、白衣、長靴、マスク着用で工場内へ。子どもの頃の社会科見学のように製造工程や働く人の姿を見せていただきました。工場はとても衛生的な環境で、私たちの食の安全はこうして守られていることを見学しながらあらためて認識しました。
工場見学を終え、お次は宮古の食を堪能!漁場基地として栄えてきた宮古の駅前には、人口に対して居酒屋がスナックの数が多いそうです。私たちは、地元で人気の居酒屋で「イカ王子」のお話を思い出しながら「王子のぜいたく至福のタラフライ」味わいました。身はふんわりで衣はサクサク。はじめて食べた「宮古の真鱈」は絶品でした。
お皿から溢れるほどのお刺身たち。中央下の「どんこ」の刺身は港町だからこそ味わえる逸品。はじめて食べるその美味しさに驚き!
その土地の食やお酒を味わうことは、旅の醍醐味ですよね。宮古の海の幸の美味しさだけでなく、人や風土を感じられる旅は続きます。
早朝7時、宮古市魚市場に付くと、たくさんの仲卸業者や売買参加者が水揚げされた水産物を囲み「セリ」が行われていました。仲買人の方がタブレット端末に入力されている姿がイメージと違って斬新でした。
現在のセリは電子入札システムを採用。これによって、スピーディーに高鮮度な流通が可能になっているそうです。モニターには水揚げ・入札情報などが大型モニターに短時間で表示されます。
市場内はとても広く、且つ衛生的。魚特有の臭いもないことが不思議なくらい。それもそのはず、宮古市魚市場は、社団法人 大日本水産会「優良衛生品質管理市場」等の認定を受けており、水揚げされた水産物の品質向上のために、上場(漁師や業者が海産物を搬入し、職員が計量後陳列する作業)からセリ、入札・搬出まで一括した低温管理に取り組んでいる、全国トップレベルの衛生管理市場でした。
昨日食べた真鱈やどんこともご対面!
魚市場食堂では、市場で水揚げされた旬の魚介類を使った定食が好評です。定食・丼物・麺類とメニューも豊富。営業時間7:00~※終了時間は要チェック
共和水産の「いかそうめん」は「宮古市魚市場」の目の前にある「道の駅みやこ(シートピアなあど)」にもズラリと陳列されていました。
また、驚いたのは共和水産の「いかそうめん」と「王子の至福のタラフライ」が地元のローソンでも販売されていること。手軽に買って食卓にすぐ出せるという共和水産の「お客様のニーズ」に合わせた販売戦略がされていました。美味しさもさることながら、地元に認められたソウルフードになっている証にも感じました。
宮古の美しい海を見納めし、1泊2日の岩手県宮古市の大人の工場見学「水産 Open Factory」の旅は終了。家でも三陸・宮古を堪能できるお土産をたくさん買い込んで仙台に戻りました。
三陸・宮古の選りすぐりを、全国の食卓へ。
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