地震やその他災害の時、家から避難する必要がある場合、持ち物として何をどれくらい持っていけばいいのでしょうか。
今回は、machico防災部の3人が、おのれの知識だけを頼りにそれぞれ自分の「持ち出しリュック」を準備。仙台市防災・減災アドバイザーの折腹久直さんと一緒に中身をチェックしながら、いざという時に必要なものについて考えました。
普段から持ち歩くのにおすすめ、折腹さん自作の「防災ポーチ」のご紹介もありますよ。
お話を聞いていく中で、避難時の持ち物準備はもちろん、それ以前に自宅の備えの大切さについても教えていただきました。
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アドバイザープロフィール
仙台市防災・減災アドバイザー(仙台市危機管理局 防災・減災部 減災推進課)
折腹 久直(おりはら ひさなお)さん
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防災部 「持ち出しリュックを準備しようと思ったときに、ふと、そういえば自宅からの避難が必要なのはどんな時なんだろうと思いました」
折腹さん 「例えば豪雨での洪水や土砂災害、津波の危険があるなどの緊急時です。それから地震の影響で、家での生活が難しい場合も当てはまります」
防災部 「家での生活が難しい場合というと?」
折腹さん 「家が倒壊の危険がある場合や、ご高齢者や障害のある方、小さいお子さんがいるなど、ライフラインが止まるといちじるしく生活が困難になるような場合です」
防災部 「いまはコロナの心配もあり、みんなが避難所に集まるとなると別な不安がありますしね・・・」
折腹さん 「そうですね。自分や家族のため、そしてまた本当に必要とする人が安心して避難所に避難できるようにするためにも、みなさんに考えておいてほしいことがあります。避難する場所は、指定避難場所でなくてもいいんですよ。有事の前に話し合っておいて、親せきや友人を頼るのも手だと思います」
防災部 「いざという時は協力しあいましょうと話あっておけるといいですね」
折腹さん 「はい。何より指定避難所は避難をするための場所であって、けっして快適に生活するためにしつらえられた場所ではありません。自治体でも水や食料の備えはありますが、これも十二分ではないので、災害時でも自宅に危険がない場合は、できるだけ家で生活できるように備えておくといいですね。ライフラインは止まることを前提に、それから家の備蓄は1週間分を目安にすることをおすすめしています」
防災部 「持ち出しリュックの前に、自宅の備蓄。確かにそうですね!」
折腹さん 「東日本大震災が起こった翌日のお昼ごろには、仙台市では帰宅困難者も含めて約10万6000人の方が避難所に集まり大混乱だったという調査結果も出ているんですよ」
防災部 「仙台市民の10分の1が避難していたんですね。今後そういった混乱を起こさないためにも、ひとりひとりの意識の備えが大切ですね」
折腹さん 「3.11当時は公共交通機関も止まり、仙台駅では1万1000人の帰宅困難者が発生したんです。地域にお住いの方が避難所を利用できるように、市ではこのことを教訓に、駅周辺の商業施設などの協力を得ながら、帰宅困難者を指定避難所以外で受け入れる体制を整えていますが、みなさんにもぜひ、職場に運動靴を置いておくとか、軽食を持ち歩くとか、それぞれにできる備えをしていてほしいです」
防災部 「さて、ここからは今回の本題“持ち出しリュック”について考えていきましょう。折腹さん、持ち出し品は、どれくらいの量を準備するのがいいんでしょうか?」
折腹さん 「目安は2日分です。また季節ごとに中身を見直して衣替えするといいですね。夏は水分や塩分、体を冷やす冷却材、冬はカイロや防寒具など、持ち出すものは季節によって変わるので」
そね丸 「わたし、完全にカンで準備しましたが、なんと着替えは2日分用意してきました!」
防災部 「さっそくそれぞれ用意してきた持ち出しリュックをチェックしていきましょう」
食料
・娘のおやつ(パン、おせんべい) ・缶詰2つ ・水(持てて500ペット×4本か?)各自コップあるといい
着替え
・着替え2日分(下着、上下、アウター〈防寒・雨具にもなるような〉、靴下、ニット帽子、手袋軍手)
日用品
・スポイト、清浄綿 ・生理用品 ・マスク ・除菌シート ・おしりふき ・ティッシュ ・タオル
その他
・貴重品(財布、通帳、保険証、母子手帳、印鑑、婚約指輪)
あるといいなと思ったが、なかったもの
・懐中電灯 ・食料(アルファ米) ・モバイルバッテリー
そね丸 「防寒具がけっこうかさばるなと思いました」
折腹さん 「アルミ製のブランケットを知っていますか?巻くと寒さをしのげますし、折りたたむとすごく小さくなるんですよ」
防災部 「それは便利ですね」
折腹さん 「それから避難生活はお子さんにとってもすごくストレスになると思うので、好きなおもちゃは持っていけるといいですね」
そね丸 「それ迷ったんですよ!画用紙とクレヨンとか、持って行った方がいいかなと思ったんですが、荷物が増えちゃうのであきらめたんです」
折腹さん 「避難所でさわいでしまい、周囲に迷惑をかけていづらくなってしまうかも。絵本でもいいし、トランプがあって気持ちが和んだという話も聞いたことがあります。
避難所に行っても用意されていないような、自分や家族特有のものはしっかり準備するといいですね」
防災部 「machico防災部#0のページに書き込んでいただいたコメントでmachico会員のHUtsumiさんからこんな相談が寄せられていました」
【相談その1】うちには幼稚園児がいます。4歳ぐらいの子供用の防災リュックにはどのようなものを入れたらいいかなと考えています。(HUtsumi)
折腹さん 「お子さん本人が楽しく背負えるものを入れてあげるといいと思います」
防災部 「やはりおもちゃですね!」
折腹さん 「あとは好きなお菓子とかね。避難時は食べることがすごく楽しみになるので、子どもに限らず大人も、保存食にこだわらないで、好きな食べ物は備えておいた方がいいですね。
親子で楽しく一緒に、遠足リュックをつくるノリで準備してみてはどうでしょうか。
大人もイメージは旅行パック。ただし泊まるホテルの質はかなり悪いことを想定してですけどね。避難所ですから」
ちゃそ 「わたし、好きな食べ物を真っ先に選んで入れてきました」
衛生グッズポーチ
・ポケットティッシュ×2 ・ウェットティッシュ ・ばんそうこう ・貼るカイロ×3 ・チャック付きポリ袋×2 ・ビニール袋×2 ・常備薬(胃薬) ・マスク×5枚 ・折りたたみコップ ・生理用品2日分 ・歯ブラシセット
食料
・水500ml ・カロリーメイト1箱 ・ソイジョイ1個 ・りんご味の飴1袋 ・チョコレート(個包装)5枚くらい
着替え
・下着2日分 ・靴下2日分 ・着替え用のスウェット ・帽子
生活用品
・薄手のブランケット ・フェイスタオル×1枚
防災グッズ
・懐中電灯 ・軍手 ・ろうそく
その他
・メガネ ・お財布 ・ポーチ(櫛、リップクリーム、鏡、持ち歩き用化粧品) ・ハンドクリーム ・鍵 ・メモ帳 ・ペン
防災部 「リュックはコンパクトなのに、めちゃくちゃ中身が充実してる!折り畳み式のコップいいね」
折腹さん 「紙コップや紙皿があると便利だったりもしますね」
ぷりぱん 「私はラップを持ってきました。ラップをお皿に巻いてから食事を盛りつければ、水がない場合でもお皿を洗わなくてもいいし、ラップはそのほかにもいろいろ使えると聞いたことがあるので、家にもたくさん備蓄しています」
食料
・カロリーメイト ・高カカオチョコレート ・サバ缶 ・水
着替え
・厚手の靴下
日用品
・マスク20枚 ・アルコール除菌シート ・ホッカイロ ・ナプキン3日分 ・常備薬3日分 ・絆創膏 ・マウスウォッシュ ・ラップ ・割り箸 ・ビニール袋
折腹さん 「ラップは包帯の代わりにもなるし、体に巻けば暖もとれる優秀アイテムです」
防災部 「さすがぷりぱん。割りばしも準備していて細やかなところまで気が利いてる!」
折腹さん 「ちゃそさんが持ってきた歯ブラシや、ぷりぱんさんの準備したマウスウォッシュなどはあるといいですね。東日本大震災の避難所では虫歯になった方も多かったようですし、口腔内を清潔にできていないことで肺炎を引き起こすこともあるので」
防災部 「それは怖いですね!」
折腹さん 「そのほかにも体をふくシートや水のいらないシャンプーなど、体を清潔に保つためのアイテムもあるに越したことはありません。東日本大震災時は、髪をちゃんと洗えたのが1か月後だったという場合もあったと聞きます」
防災部 「体を清潔にすることで気持ちもすっきりしますもんね」
折腹さん 「今はコロナウィルスの心配もあるので、マスクやアルコール消毒、手洗い用せっけんのほか、体温計も持っておけると安心です。市で避難所に備蓄している感染対策物資も、避難者の数によっては不足することも考えられます。各自でお持ちいただきたいんです」
防災部 「ひとまずはそれらもろもろを2日分を準備すると。持てる重さは男性で15㎏まで、女性で10㎏までが目安ですもんね」
折腹さん 「そうです。2日後には状況が落ち着いていれば家に追加で物を取りに行ったり、支援物資も少しずつ避難所に届いてくるはずなので、取り急ぎ2日分を準備することを推奨しています」
防災部 「準備した持ち出しリュックはどこに置いておくといいんでしょうか」
折腹さん 「持ち出しやすい場所がいいですね。玄関先で邪魔にならないところとか。
家の備蓄品は、『分散備蓄』と言って、置く場所を一か所に絞らず、いくつかに分けて置いておくといいでしょう」
防災部 「どうしてですか?」
折腹さん 「例えば地震で部屋の中のものが乱れて備蓄品が取り出せなくなったり、豪雨で浸水してダメになってしまうことも考えられるからです。1か所に置いておくと全部使えなくなってしまいます」
防災部 「そうなんですね!」
防災部 「持ち出しリュックや家の備蓄も重要ですが、machico会員ののん*さんからはこんな質問コメントをいただきました」
【相談その2】いつ何が起こるか分からないので、普段の通勤時にも持ち歩いた方が良いものは何か …あげたらキリがなさそうですが。(のん*)
折腹さん 「私は100円ショップで買えるものでつくれる“100円防災ポーチ”をいつも持ち歩いていますよ」
1 簡易ブランケット(アルミシート)1
2 簡易トイレ 1
3 使いてカイロ 1
4 ポケットティッシュ 1
5 歯磨きシート 1
6 ボディーシート 1
7 ウエットティッシュ 1
8 コンパクトタオル 2
9 不織布パンツ 1
10 絆創膏(中・小)各8
11 綿棒 5
12 ソーイングセット 1
13 モバイルバッテリー(コード) 1
14 油性ペン・メモ 各1
15 飴 4
16 栄養補助食品 1
17 ライト付きホイッスル 1
18 ゴム手袋 1
19 保存袋 3
防災部 「簡易トイレも100円ショップで買えるんですね!」
折腹さん 「災害時用のトイレは準備しておいた方がいいですよ。車にも積んでおくことをおすすめします。トイレができる環境がないと、水を飲むのを控えて脱水になってしまったり、エコノミークラス症候群の危険性が出てきます。ちゃんとトイレに行かないと食欲も出ないですしね」
防災部 「水道が止まった時、お風呂にお水をためていたら、その水でトイレを流せばいいと思っていました」
折腹さん 「それも有効ではあるんですが、災害直後にはあまりおすすめできません。排水設備などに破損があって、どこかで漏れたり、逆流してあふれ出てしまうことがあります。不用意にお風呂の水で流さない方がいいでしょう」
防災部 「そうなんですね!今回もめちゃくちゃためになりました!ありがとうございました!」
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仙台市シェイクアウト訓練に参加してみましたレポート(2021年7月公開予定)
6月12日の「市民防災の日」にあわせて毎年行われている防災訓練に参加した様子をレポートでお届けします。頭で考えるだけではなく体を動かして備えるシミュレーションにもお役立てください。
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震災10年目を機にスタートさせた「つながるプロジェクト」の一環です。
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