2019年07月26日
[編集長コラム] 言葉の力を信じたい。「仙台短編文学賞」
編集長コラム~仙台・宮城、時々山形~
編集長コラム~仙台・宮城、時々山形~

 

みなさん、こんにちは。
前回のお題「あなたができるSDGs」に、100件ものコメント投稿いただきまして、ありがとうございました!
小さなことでも、ひとりひとりが意識して行動するとやがて大きなうねりになる、いつも感じていることですが、そのうねりは自分の身の回りだけではなく、世界につながっていくことかもしれないですね。


 

さて、今回は先日から募集が始まった「第3回仙台短編文学賞」について、お知らせしたいと思います。
これまでの表彰式の様子はmachicoにも掲載していますが(第2回仙台短編文学賞表彰式の様子)、「文学賞」と言われても今まで小説など文章を書いたことがない人にとっては、「文学賞」そのものがどういうものなのかよくわからなかったり、賞にチャレンジしたいと思っている人でも、敷居が高い印象、というところで留まってしまっているかもしれません。

そんなみなさまに、もう少しこの文学賞を立ち上げるために思いを寄せた人たちの声を、お伝えできたらなと思います。

歴史を振り返ると、江戸時代の仙台には多くの書肆(本屋さん)があり、盛んに出版活動が行われていたという記録が残っています。
文化・文政期の文人・只野真葛は仙台で旺盛な執筆活動を行い、数多くの本を著しました。東北学院大学では島崎藤村が教鞭をとり、魯迅は東北大学の留学中に文学者への道を志したと言われています。
戦後、「新しい文学を東北から発信していく」という強い意志のもと河北新報社が創刊した総合文芸誌『東北文学』には、太宰治や武者小路実篤らが寄稿し、中央文壇とは異なる形でここ仙台の地で文芸復興を目指しました。

歴史を知ることで、「文学のまち」のイメージが膨らみます。

「仙台短編文学賞」の設立を企画したのは、2010年に遡ります。
この年は、柳田國男『遠野物語』刊行百周年や仙台市の老舗書店「金港堂」の創業百周年が重なって、荒蝦夷とプレスアート、東北大学出版会と、仙台の出版社が共同でトークイベントやブックフェアなど、仙台市内でさまざまなイベントを実施していました。
そんななかで、これまで仙台になかった文学賞を自分たちで立ち上げようと、仙台の編集者、出版関係者が動きだします。
しかし、最終的な打ち合わせを行った2011年3月10日の翌日、東日本大震災が起きてしまいました。
その後は、震災復興のためみんな必死でしたから、この話が自然消滅してしまったのも無理もありません。

それから7年が経つ頃、もう一度あの「仙台短編文学賞」を立て直そうと、プレスアートの川元さんから提案がありました。
「震災後、自分たちの地域の歴史や特色を見直す機会が増えました。あの地震によって、地面や海だけじゃなく、地域や個人のアイデンティティも揺らいだような気がします。あの震災をどうとらえたらいいのか、立ち止まって考えるタイミングがあらためてきているんじゃないかと感じています。」と川元さんは語っています。

震災経験は、あの日だけの特別なものではなく、被災した人間にとっては日常として今も続いている、震災自体が仙台の町の歴史のひとコマになってきています。
「その時のにおいや音や感情を伝えることができるのは、文章なんじゃないか。」荒蝦夷の土方さんもまた、被災した地域からまだ被災していない地域の人たちに、なんらかの発信をする責任がある、と。


「仙台短編文学賞」対談より(左:川元氏 右:土方氏)

 

そして2017年、第1回「仙台短編文学賞」の応募をスタートさせました。

第1回目は576編、第2回目は324編の作品が集まりました。

今年、第3回目の応募が始まり、選考委員の柳美里さんをお迎えした記者会見が行われ、そこに参加してきました。

芥川賞作家の柳美里(ゆう・みり)さんは、小説家・劇作家として、現在南相馬市にお住まいです。
そして、自宅を改装して、本屋「フルハウス」を2018年4月にオープンしました。
さらにクラウドファンディングで資金を募り、現在ブックカフェスペースを建築中です。
柳さんの取り組みや、神奈川県鎌倉市から被災地に移住した思いについては、ぜひこちらをお読みください。
芥川賞作家・柳美里とあなたがつくるブックカフェ

「言葉にできないものと向き合った、沈黙の時間を感じさせる作品を選びたい。」
“仙台・宮城・東北となんらかの関連がある作品”というゆるやかな制約を、狭くとらえるのではなく広くすることで、創意が生まれてほしいと柳さんは作品に期待しています。


私は、柳さんに質問をしてみました。
「文章を初めて書くきっかけを作るとしたら、どんな言葉で背中を押してあげますか?」と。

「私は“仙台・宮城・東北となんらかの関連がある”という言葉は、背中を押すきっかけになるのではないかと思います。
書くならいいものにしたい、評価されたいということではなく、“なんらか”という言葉を握りしめることで、書きたい、書かなければならないと、それ自体が自分の中で大きな力になっていくのではないかと。
まずは、書いてみる、でも書く前に話してみる、話してみる前に、言葉と向き合う沈黙の時間から始めてほしい。」

小説を書いたことがない私でも、書いてみたいと心を動かされた言葉でした。

「仙台短編文学賞」の応募作品は、2019年11月15日(金)まで受け付けています。
ぜひ、応募という挑戦をしてください。

もちろん、「文章」は評価されるためのものだけでもなく、「伝える」というとても大切な役割があります。
この「文章」というツールが震災の風化を防ぐことにもつながっている、そう考えると沈黙から初めてみたくなりませんか?


【第3回 仙台短編文学賞 募集要綱】

第2回目受賞作品は『Kappo 仙台闊歩』99号にも掲載されています。


 

 

 

profile | プロフィール

編集長 門脇 佐知(Sachi Kadowaki)
ニックネーム さっちん

2010年machico立ち上げを行い、2011年からは編集長に就任。 社内では、ワークイノベーション委員会「BLENDA部会」部会長として、ワークもライフも大切にするポジティブな人生を送るため、いろいろなことにチャレンジ中です。 プライベートは夫と息子との3人家族。旅行とドラマ好きで、座右の銘は「しなやかに かつ 強かに」。

 

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【応募締切】2019年8月27日(火)
【当選発表】メール送信をもって発表とかえさせていただきます。