せんだいタウン情報 マチコ

2017年09月20日
TALK Vol.7 ファミリーバンド ボギー家族
-各界で活躍されている方にインタビュー。すてきに生きるヒミツを探ります。
Vol.7 ボギー家族「家族バンド 家族5人で過ごせる時間は、きっと短い。だから今は、できるだけ一緒に。」

 

 福岡を拠点に活動するロックアーティスト・ボギーさんが、家族と共にアルバムを作成。長男の門土(モンド)くん(13歳)、次男の天晴くん(9歳)、末っ子の今ちゃん(4歳)、そして妻であり母であるベイビーさん。前代未聞の家族バンドが、『夏休み!ボギー家族ツアー2017』を行い、仙台でフィナーレを迎えました♪
 第1部は独特な画風が話題を呼んでいる長男モンドくんの似顔絵屋さん、第2部は家族5人が奏でる今しかできないファミリーライブ!そんなわくわくの仙台会場にマチコ編集部がおじゃま。
 ありのままに自由に、楽しいことを探し迷いなく行動し続ける稀有な家族の魅力とは?お話を聞かせていただきました。

 

 

家族でめぐる全国ツアーを通して、
血のつながりを感じ、一緒に成長できたら。

 7/22の広島会場に始まり、夏休み期間の3週間近くを使って、家族5人で福岡から日本を縦断するツアーを行うなんて、ものすごく楽しそうな反面、大変なことも多かったと思うのですが、実際はどうだったのでしょうか?はじめに今回のライブツアーのこと、そもそも家族ツアーをはじめたきっかけについてもうかがいました。

●ボギーさん
「もともと私はいろんなところをまわるツアーミュージシャンなのですが、各地に出向いた時に出会ったおもしろい場所や面白い人たちを家族にも見せたいなと思ったのがきっかけで、家族ツアーをはじめました。いちばん最初のツアーは3年前で、8カ所まわりました。その時は1回こっきりのつもりでしたが、あまりにも楽しくて、去年は夏休みの間に18カ所ダーっとまわりました。むちゃくちゃ楽しかったんですけど、日程的にはハードすぎたので、今年はちょっとだけ減らして15カ所に。でも去年のツアーで家族全員が体力ついたのか、今年は15カ所あっという間でした。
 1回目のツアーは私がお世話になった場所をまわったんですが、私のブログでそのレポートを見た方々が、「今度はうちの町でも」と呼んでくれて、今回仙台もはじめて訪れました。はじめての町に家族みんなで行って、はじめての人たちとこうやってふれあえることがうれしいです」

 

 

 仙台が今回のツアー最北の地であり、フィナーレの場所である理由は、『荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展』。モンドくんが「ジョジョ」の大ファンで、夏休みに『ジョジョ展』に行きたいと言ったことが発端なのだとか。ボギーさんがツイッターでツアーの協力を呼び掛けたところ、今回の主催者と知り合うことができたそうです。
 さて、ボギーさんにとって、今回のツアーで特に印象的なことは何だったのでしょうか?

●ボギーさん
「どの町でもたくさん歓迎してもらいました。仙台の前日は福島だったんですが、民宿ではなく普通のおうちに泊まらせてもらって、そこのお母さんが、朝も晩も料理をたくさん用意してくれました。お昼にはお弁当つくってくれて。
 鳥取の米子では、廃校になったばかりの小学校に泊まりました。近所の方々が野菜を畑からいっぱい持ってきて夜は料理を作ってくれて、宴会をしました。
 本土からフェリーで3時間くらいのところにある島根の隠岐の島に行ったときは、モンドが行きのフェリーで熱を出して胃腸炎になって倒れて、1週間くらい絵が描けなくなってしまったんです。その時は下の2人が代わりに似顔絵を描いて、さらにお客さんの写真を撮って、後日モンドが描いた似顔絵も送ったりして。大変でしたね。島でもいろんな人にお世話になりました。帰りの船が出港するとき、島の人たちがみんな見送りに来てくれたと思ったら急に、私たちの曲が島の放送で流れて来たんですよ!そんな中手を振りながら“また来るよー!”“また来いよー!”って。すごく感動しました」

 

 移動は車で、運転はベイビーさん1人が担当。1回の移動距離を少なくしたり、おととし1回目のツアーから、ツアースケジュールもだいぶ進化しているのだとか。15か所を回った去年のツアー後は、家族全員ボロボロ、みんなで結膜炎にかかってしまったそうですが、今年は最終日でもみんな元気!とのこと。

 

 

 このイベントを訪れる前に読んだボギーさんのブログに、家族で旅に出る理由が書かれていました。
http://mondo-art.blog.jp/archives/51738806.html
 その中に、「血のつながりを感じて、一緒に成長できたら」という文章があったのですが、「血のつながり」って、どういうところで感じるものなのでしょうか。

●ボギーさん
「家族、親子で巡るツアーなので、道中けんかになったり、叱ったりすることはもちろんあります。
 逆に子どもたちにライブで助けられたりすることも多いんです。彼らのセンスでステージがボンて盛り上がることもあるし。天ちゃん(天晴くん)はバンドのリズムの要であるカホンという打楽器を担当しているんですが、ひとつの曲の中でも早くなったり遅くなったりわりと癖のあるテンポで演奏しなければならないんです。でも天ちゃんそういう呼吸を感じ取って、私の演奏に自然にあわせられるんですよ。そういうときに感じますよね、親子やなって。それから家族全員でわってコーラスを歌った瞬間に、家族って声が似ているのか、かたまりの力をすごく感じるんですよね。他の人とハモっているときには感じない一体感を」

 DNAの神秘を感じます。天晴くんがカホンを演奏したのは、実は去年がはじめて。それもたまたまツアーでめぐった会場に置いてあったのを叩いてみたらできたので、その後楽器を購入し、今年は最初から持ってきて演奏しているのだそう。
 モンドくんが胃腸炎になったときに、下の2人が似顔絵でサポートしたり、去年はライブ中でも眠くなったらステージの上で寝てしまっていた今ちゃんも、今年はあくびはしても最後まで起きて演奏しようとしたり。ライブにしろ、移動時にしろ、各自が自分の役割みたいなものを理解して、去年まではなかった責任感が生まれてきた、とボギーさんは語ってくれました。

 


奔放な今ちゃん。So Cute!

 

 

変わっていく家族の“今”を、
スナップ写真のように切り取った音楽アルバムを。

 ボギー家族は今回のツアーを前に、家族でひとつの音楽アルバムをつくり上げていました。そのタイトル『バカになりましょう』。家族でひとつの作品をつくりあげるってなかなかないことだと思いますし、すごく大変だと思うのですが。

●ボギーさん
「全然大変じゃなかったです。ふだんの家族の生活の一部、その空気感を、どれだけそのまま収められるかを考えてつくりました。だから演奏や歌詞が途中で間違っているところもあるし、“違うよ”っていう台詞もそのまま録り直さずに入れています。子どもたちの話し声や笑い声とか、いろんな声も全部、ふだんのわが家の中の生活の音が入っています。
 例えば家族の記念写真も、ビシッと真顔でかしこまって撮るとあまりおもしろくないじゃないですか。それよりもスナップの方がおもしろいから、スナップのような音楽アルバムがつくりたかったんです。だから練習もなるべくしないようにして、最低限歌詞を覚えているくらい、演奏もあまりうまくなる前に、子どもたちそれぞれの感覚で演奏してもらっています。
 たぶんこのツアーが終ってレコーディングしたら、もっと上達してしまっているから、また違うんですよね。つたなさが残っている瞬間を残そうと思ったんです。
 制作過程で大変だったことは本当に全然なくて、楽しいばっかりでした。楽しいときがそのまま入っていると思います」

 

 
ボギー家族のファーストアルバム「バカになりましょう」
仙台ではレコードショップ『Volume1(ver.)』で購入可能です。

 

 アルバムタイトル『バカになりましょう』は、もともとあったボギーさんの曲のタイトル。家族アルバムのタイトルに、この曲を選んだ理由とは?

●ボギーさん
「この曲は、昔からある私の曲なんですが、ライブで演奏をはじめると、覚えやすい曲なので子どもたちが乱入してくるんですよ。曲の中に出てくるセリフで“バカな人手をあげてー”と言うところがあるのですが、その時子どもたちが“はーい!”って言って、そこからいっしょに歌う。そもそもこの家族バンドも、子どもたちが勝手に私のステージに乱入してきたことの延長からはじまったんです。
 うちの子どもたちにはステージの上も下も関係なくて、それが日常なんですよ。物心つくまえからステージに上がったり下りたり、騒いだりしてきたので。音楽に関しても、例えば忌野清志郎とかビートルズと同じようにお父ちゃんの音楽があって、いちばんよく生で聞いているのがお父ちゃんの音楽だから、それを覚えて、それで自分が乱入できる場所を虎視眈々と探っていたんです。やっぱり子どもは目立ちたがりやなので。だから曲を覚えたらステージに上がって来て、盛り上げてくれるんですよ。はじめの頃はわけのわからんタイミングでステージに上がって来たり、静かに聞かせたい曲で乱入して来たりしたので、そこはちゃんと怒っていました。そうしたらいつしか子どもたちなりのお父ちゃんの間合いを覚えて、ライブを助けてくれる存在に成長してくれたんです。そして気が付いたらこういうカタチでバンドになっていたんですよね」

 

 結局何事も楽しめるかどうかは自分次第。そこでバカになれるかどうかは大きなポイント。だから歌詞の中にある“バカな人手をあげてー”を合図に、みんなで手を挙げるだけで、わーっと楽しくなる。格好つけて見ているだけじゃつまらない。それがアルバム全体のコンセプトと語ってくださったボギーさん。そんな作品を、どんな方に聞いてほしいか伺うと。

●ボギーさん
「いちばんは大きくなった時の子どもたちに聞かせたいですね。そのために作ったような気がします。たとえば大きくなってぐれたりしても“あれ聞くぞ”って言って(笑)。
 それから今ちゃんの結婚式では、バージンロード歩くときに3曲目の「おさんぽ」を流してもらう。完全に自分と家族のためにつくったアルバムです。でもいい作品ができたので、はじめて会う人でもボギー家族のライブを見て気に入ってくれた方に聞いてほしいですね。アルバムは手売りがほとんどなので」

 

 驚くべきことにこのアルバム、つくろうと思い立ったのが2017年の5月、レコーディングが6月、仕上がったのが7月というスピード作品。音楽も家族の手づくりなら、ジャケットのデザインもすべてボギー家族作。タイトルのイラストはボギーさんが、中面は天ちゃんが、盤面に描いてある5人の顔は今ちゃんが、歌詞カードのカラフルな木の絵はモンドくんが描き、みんなの絵を組み合わせてできたジャケットなんです。さらにジャケット折って袋に入れる作業も家族全員で。どこからどこまでも完全に一家の手づくり作品なのに驚きました。

 

 

 

それぞれが楽しいことを見つけ、
家族を巻き込んでさらに楽しむ。

 家族みんなでライブツアーを行い、泣き、笑い、家族で成長していく。自由でしなやかで何より思いっきり楽しそうで、独特のエネルギーと魅力を放つボギー家族。気になるのが、子育てについてなのですが。子どもたちの個性を活かしてのびのび育てる極意はあるのでしょうか?

●ボギーさん
「なるべく一緒にいる時間をいっぱいつくる、同じ思い出をたくさんつくることは心がけています。たぶん5人が家族で一緒にいられる期間は、めっちゃ短いと思うんですよ。現在は今ちゃん4歳、モンドが13歳でしょ、10年たったらモンドが23歳で、その頃今ちゃんは14歳だけど、上のお兄ちゃんたちはすっかり大人になって家を飛び出して、ひょっとしたら自分の家族ができているかもしれない。そう考えたらこの5人編成で生活できる期間は、10何年ぐらい限定なんじゃないかなと思うんです。だからいっぱい思い出をつくろうと思って、その思いをかたちにしたのが、こういうツアーであり、アルバム作りであるという。
 私がおもしろいことしかしたくない人間なので、なんとか試行錯誤しながら音楽に限らず遊びを生活に変えてきたわけですが、その姿を子どもたちが見ているでしょ。楽しい家族でいる秘訣は、それぞれが自分の楽しいことをやるってだけ。私も子どもためにと考えて行動しているわけではなく、どちらかというと自分がやりたいことに、家族を巻き込んでる。巻き込んでいる以上はみんなを楽しくしたいし、楽しいことに巻き込みたいんです。私は真っ先に楽しんでいる姿を見せて、大人になるのは楽しいよって思ってほしい。大変大変しんどいしんどいって大人が言いよったら、大人になりたくなくなるじゃないですか。仕事もしたくなくなってしまうかもしれない。仕事も楽しんでやればいいし、なんでもやろうと思えば仕事になるよ、自分次第よって」

 

 


会場で自由に過ごす天ちゃんと今ちゃん。

 

 そんなボギーさんの背中を見て育ったからか、モンドくんの似顔絵屋さんも自主的に始まったことなのだとか。ボギーさんがおこずかいをあげなかったので、モンドくんは自分でできることでおこずかいを稼ぐ方法を考え、お父さんのライブ会場の片隅で似顔絵屋さんを開くことを思いついたそう。
 似顔絵を描いている時は真剣そのもの、13歳にしてプロのアーティストオーラが漂っているのですが、ふだんの彼は学校でも有名ないたずらっ子だったのだそう。信じられません。
 まわりの友だちが塾や習い事に通い始める9歳頃、うちはそんな余裕がないけれど1日1個は何かやろうという話し合いが夫婦、親子でなされ、ボギーさんがモンドくんにお題を出し、毎日絵を描く家の中での宿題が始まったのだと言います。それは今も続いていて、そこからモンドくんの才能は開花し、今の華々しい経歴に繋がっているのです。

●モンドくんプロフィール●
 自分ではじめた似顔絵屋さんでの独特のタッチが話題を呼び、2014年に初の画集「モンドくん」(PARCO出版)を発表。福岡で発行されている雑誌『ヨレヨレ』の表紙や挿絵を手がけ、谷川俊太郎さんとのコラボ作や瀬戸内寂聴さんの「死に支度」の挿絵も担当。メディアにも多く取り上げられ、東京、台湾、シンガポールで個展を開くなど国内外で多くの注目を集めている、現在13歳の男の子。

 

 知らない人にもたくさん出会うツアー、子どもたちはみんなにぎやかな会場にすぐ溶け込んでいるように見えました。それも育ってきた環境に由来するようで。

●ベイビーさん
「うちの子はみんな人見知りしないんですよ。自分からぐいぐいいきますね。昔からライブハウスに行ったり、バンドマンがうちに泊まりにきたりして、朝起きたら知らない人が家で寝ているような状況はよくあったので、はじめての人と接するのは当たり前でした。ライブハウスには変わった人がいっぱいいるじゃないですか。個性的なアーティストの方に遊んでもらったりしてきたので、人前でも物怖じしないですね。こういう長旅もけんかしながらのびのび楽しんでいます。
 子育ては、はじめ門ちゃん(モンドくん)一人のときは、私もいろいろ神経質になっていたんですが、2人3人と子どもが生まれると、どんどん楽になっていく感じがしましたね。1人っ子だと、お母さんにずっとついていて、なかなか離れないし、私が遊んであげないといけないけど、兄弟が増えると“お兄ちゃん遊んどいてー”ってお願いできる。兄弟げんかはいっぱいしますけど仲はいいですね。だから子どもはいっぱい生んだ方がいいですよ。その方が自分自身も育つし、子どもたちも一緒になって育つと思うんです」

 おおらかで、やさしくて、とてもあたたかい声で話してくださるベイビーさんの言葉を聞いて、ボギー一家のツアーが実現できるのは、この母の愛があってこそなのだなぁと感じました。

 

 

●ボギーさん
「家族でこの場所で、こうして演奏したり、今見える景色も来年あるかどうかわからない。来年はできたとしても、ずっと続くものじゃない。今だけだなというのも感じながら進んできました。家族ツアーの楽しさを知ってしまった分、ちょっとやっぱり切なさはあります。
 家族を取り巻く状況はどんどん変わっていくと思うので、仲良く楽しく健康でというような、ごく普通の親が思うようなことはいつも願っていますね。ミュージシャンとしては今が楽しいんで、そこそこ食べられれば、これ以上有名になって忙しくならんでもいいと思っています。今は月の半分はライブや企画イベントなどをやっているのですが、年齢を考えたらこのペースでは永遠には続けられないと思うんです。でもツアーやイベントは大好きなので、続けて行きたいですね。続けることが大事だと思います」

 

 今しかない、限りある時間だからこそ輝く一瞬を、大切な家族とめいっぱい過ごすこと。できそうでなかなか難しい、でも本当に大切なことを教えていただいたように思います。
 ボギーさん、ベイビーさん、モンドくん、天ちゃん、今ちゃん、ありがとうございました!

 

 

 インタビューの後、モンドくんに似顔絵を描いてもらいました!これからの目標と、この旅の感想は? と聞いてみると。

●モンドくん
「これからは風景画もいっぱい描きたい。この旅はすごく楽しかった。似顔絵を描いてきていろんな場所へ行けたしいろんな人に会えたのがよかった」

とのこと。会場で販売されていたオリジナル缶バッチのデザインも、モンドくんのオススメは風景画のものでした。(すでに売切れで買えず・・・)

今後の活躍が楽しみです!

 

 

 第2部のファミリーライブもアットホームな雰囲気で大盛り上がり。
仙台にもファミリーができ、日本全国にファミリーを持つボギー家族と一緒に、にぎやかな夜は更けて行きました。

 

 


当日の様子を、映像作家すずきたつやさんが撮影/編集した動画を公開中!

 

 

ボギー家族のブログはこちら

ボギーの悪趣味音楽作法
モンド今日の絵
今ちゃんぽ

忘れられない家族との思い出をおしえて!

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