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2017年12月06日
ポップオペラの貴公子は、人見知りの音楽好き少年でした。
ヴォーカリスト・藤澤ノリマサさんインタビュー
machico的・気になるパーソン
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「ポップス」と「オペラ」を融合した「ポップオペラ」という新しいスタイルを提唱するヴォーカリスト、藤澤ノリマサさん。
クラシックの旋律を取り入れた美しい楽曲を歌い上げる歌唱力をもってして、デビュー10周年を来年にひかえる2017年、R&Bを取り入れた新曲「Stay forever~あなたを守りたい」と、NHKみんなのうた「ダンディーひつじ執事」をリリース。さらに往年の名曲をカヴァーし「藤澤ノリマサ ポップオペラ名曲アルバム」と題してYoutube配信するなど、新しい挑戦を続けています。
柔らかな口調、やさしい物腰。そして小さな頃から人見知り。ポップオペラの貴公子と呼ばれる藤澤ノリマサさんを、唯一無二の歌へと突き動かすものは一体何なのか、お話をうかがいました。

 

●歌手を志したきっかけは何ですか?

 僕は小さな頃からすごく人見知りで、クラスでもあんまりしゃべらないし、みんなでサッカーや野球をするのが苦手で、休み時間には教室の片隅でオルガンを弾いているような子どもでした。当時の小学校の担任がすごく熱血な女性だったのですが、“ノリマサの良さをみんなに伝えるにはどうしたらいいんだろう”とすごく考えてくれる先生だったんです。
 その頃から音楽は好きだったので、あるときふと国語の教材詩にメロディをつけて、先生に聞いてもらったら、“ノリくんいい曲だね、それじゃあこの曲を次の授業のはじめにみんなの前で歌って”って言ってくれて。恥ずかしかったんですが先生の後押しもあって、みんなの前で披露したら、クラスの子たちが“ノリめっちゃいい曲じゃん”と褒めてくれたんです。その曲をいつしか5年生全員で歌うようになって、さらにその年が小学校の25周年だったのですが、そのテーマソングに決定して、なんと当時の全校生徒1000人で僕が作曲した曲を歌ったんです。それが僕の作曲家デビューでした。地元の新聞にも“わが町のモーツァルト”というように取り上げられて、うれしかったです。そのことがきっかけで音楽をつくるようになりました。
 歌うことも好きでしたが、自分から自発的に動くタイプではなかったので、親が勝手に申込んだ町内のカラオケ大会で優勝したり、いろいろなコンテストで入賞するようになっていきました。不調で声がかすれていても入賞したり、そんな風にまわりに認めてもらううちに、中学生くらいで歌手になりたいという気持ちになりました。まわりの人たちが、僕を歌の道に誘ってくれたんです。

 

●唯一無二のスタイル「ポップオペラ」は、どのように確立したのですか?

 「ポップオペラ」とは、1曲の中に有名なクラシックのメロディと、ポップスのメロディを融合させてつくり上げるジャンルです。必ずサビに、どこかで聞いたことのあるようなクラシックのモチーフを取り入れていて、そうかと思うとポップスの書き下ろしのメロディもミックスしています。歌い方もポップスの発声とイタリア・オペラのベルカント歌唱法2種類を取り入れて、1人で歌っています。
 父はクラシックが好きで、小さな頃からクラシック音楽が流れている家庭で育ちました。シンフォニーだけでなく、オペラや三大テノール、マリアカラス、イタリアを代表するテノール歌手のCDも1000枚くらい実家にコレクションされていました。かたや母は演歌や歌謡曲など日本の音楽が大好き。母自身も歌の全国大会で1位を獲るような歌手で、そんな母のパフォーマンスも身近にありました。そんな環境だったので、自然と音楽に親しんでいきました。
 中学生頃に歌手になりたいと思って、作曲をはじめていたのですが、高校1年生の時にセリーヌ・ディオンがイタリアで活躍する盲目のテノール歌手アンドレア・ボチェッリと「The Player」という曲をデュエットしているのを聞いて、クラシックの音楽家とポピュラーシンガーが一緒に歌っていることに感銘を受け、これを1人でできたらかっこいいだろうなと思って、ポップオペラの着想を得たんです。
 僕はオンリーワンでいたかった。それまでもバラードを歌っていきたいという気持ちはあったんですが、それだけだと自分だけの表現にならないと思ったんです。ポップスも好きだしクラシックも好きだしと悩んでいた時に、この楽曲を聞いて、ひとつに決める必要はないんだという考えにもたどり着きました。
 武蔵野音楽大学時代に出会った声楽の菊地英美先生にも本当にお世話になりました。すごく心の大きい先生で、“伝統的なクラシックの型にはまった考え方を持たず、どんどん新しいことに挑戦してほしいし、僕の生徒ががんばって活躍してくれるのが一番だ”と言ってくれたおかげで、僕のスタイルを貫けたと思います。大学でのレッスンでも、“クラシックとポピュラーの歌い方を両立できるのはおまえしかいない”と、そういうレッスンをしてくれました。先生は今でもコンサートに来てくださいますし、恩師ですね。

 

●その他にも歌手をめざす後押しとなった出来事はありますか?

 高校1年生の時に1ヶ月ほどサマースクールのショートステイで、カナダのバンクーバーを訪れました。その1ヶ月はその後の人生をものすごく左右する時間だったと思います。
 ショートステイをしている時にも歌を歌う機会に恵まれました。僕1人だったら歌う勇気はなかったと思うのですが、まわりの先生たちの後押しで、カナダの学校の音楽の先生に歌を聞いてもらったら、 “beautiful すばらしい!”と言ってくれて、ショートステイプログラムの最後のさよならパーティーで歌うことになったんです。その曲は僕が15歳でつくった日本語のオリジナル曲だったのですが、カナダの学校の友だちもホストファミリーもみんなで聞いてくれて、スタンディングオベーションが起きて。言葉は通じなくても、音と音とのつながりがあることを感じて、勇気づけられました。異国の地で出会った友だちや先生、一緒にカナダに行った人たちは一生の財産だなと思っています。

 

●新曲「Stay forever~あなたを守りたい」の魅力をおしえてください。

 今回は中西圭三さんが曲を書いてくださったのですが、それが本当に壮大で。さらにこれまでにケミストリーやファンキー加藤さんの楽曲をアレンジされてきたポップフィールドで活躍されているYANAGIMANさんがアレンジをしてくれて、作詞は安室奈美恵さんの『ALL FOR YOU』を書いた渡辺なつみさんが手がけてくれました。
 まずR&Bの中西さんが僕のために書いてくださったギターのデモ曲を、僕なりにどうポップオペラでパフォーマンスしようか考えました。僕はピアノがバックボーンにあるのでピアノを使って、メロディはくずさずにコードをちょっと変えたり、中西さんの曲を自分なりにアレンジしてつくり上げました。
 全く違うフィールドで活躍される方々と、はじめてタッグを組んでポップオペラを作ったというのが非常に新鮮で、僕の音楽でこのようなタッグは今までなかったので、いろいろ新しい発見ができました。


『Stay forever~あなたを守りたい』PV

 

●愛や希望、壮大なテーマを多く歌われていますが、そんなメッセージを届けようと思うのはどうしてですか?

 自分自身が愛や笑顔や希望をまわりからたくさんもらっているからだと思います。それが原動力になって、ふと迷いそうになったときに、こっちだよと自分自身の行先を示すひとつの基準になっていると言うか。僕は本当に両親に愛をいっぱいかけて育ててもらって、音楽という生きる道も両親からもらったものだと思いますし、やめてはいけないことだと思っています。僕の歌が生きがいですと言ってくれるファンのためにも、必然的にそういうテーマになるのだと思います。

 

●アーティスト活動をするうえで大切にしていること、心がけていることは?

 10年メジャーで活動できるというのは、本当に恵まれていることだと思います。たくさんの人が関わって支えてくれてアーティスト藤澤ノリマサをつくってくれていることを忘れてはいけないと思っています。毎日毎日いろいろな人に会っていろいろなことをやって忙しくしていても、感謝の気持ちを忘れないということを大切にしています。

 

●2018年で10周年を迎える藤澤さん。2017年はどのような年でしたか?

 駆け抜けるような1年でした。初のダンスもやりましたし(笑)。念願だったNHKみんなのうたで「ダンディーひつじ執事」を歌わせていただいて、デビュー当時から僕を知っている人には“どうしちゃったの!?大胆なことされましたね”と驚く人もいれば、“いいじゃん!”と言ってくれる人も多かったです。
 「ダンディーひつじ執事」を歌うことが決まった時、はじめての試みで不安も多かったのですが、レコーディングスタジオに行ったら自然と歌以外のセリフやダンスもできちゃったんです。“かしこまりました”“お手を拝借”とか、執事のセリフを言ったり、キレッキレのダンスを踊るLDHの子どもダンサーたちとミュージックビデオの撮影をしたり。ダンスはてこずるかなと思ったのですが、“うまさを求めているわけじゃないから、楽しんでください”と言われた時にすーっと落ち着いて、楽しく踊ることができました。これまで知らなかった自分の引き出しが9周年にして見つけられたと思います。それまでの自分のテリトリーを外れてもまた戻ってくればいいだけ。この曲に挑戦したことで、僕が歌えば、みんなのうたもStay foreverも希望の歌も、すべて藤澤ノリマサの歌になる、そのことに気づけました。


『ダンディーひつじ執事』PV

 

 

●今年うれしかったことはなんですか?

 『ファンタジー・オン・アイス2017』というスケートショーで羽生結弦さんとお会いした時にお話したら、羽生さんに“僕昔から藤澤さんのこと知ってるんですよ”と言われてびっくりしました。かつて僕は仙台放送のテレビ番組で、子どもたちのスケートショーの曲をスケートリンクの上で歌ったことがあるのですが、その時同じ会場にまだ仙台のジュニアクラスに所属していた羽生さんがいたそうなんです。すごくうれしくなりました。音楽は誰がどこでどんな風に聞いているかわからないし、本当にいろんなところで広がっていくものなのだなと感じました。

 

●10周年の夢や目標をおしえてください。

 「ダンディーひつじ執事」のような作品も含めて、10周年はもっとフレキシブルに活動したいと思っています。
 たとえば今は、僕が影響を受けた日本の名曲を、音楽プロデューサーの武部聡志さんがアレンジして、そのピアノ演奏をバックにポップオペラで歌う「ポップオペラ名曲アルバム」という活動をやっています。ワーナーミュージック公式YouTubeチャンネルに定期的にアップしているのでぜひ見てみてください。楽曲選びは2人で行うのですが、「時の流れに身をまかせ」や「川の流れのように」といった7、80年代の曲が今は多いですね。これからはONE OK ROCKの「Wherever you are」のような今の世代にも届く曲を歌ってみたいと思っています。
 日本にとどまることなく、海外でもライブをやりたいと思いますが、まずは紅白に出て、武道館でもライブをやるという目標に向かって、一歩一歩踏み外さないように、冒険をしながら進んでいきたいと思います。
 昔仙台フィルとコンサートを行ったこともあり、オーケストラとのコンサートも多いのですが、2017年は東京と大阪でのコンサートとディナーショーしかないので、来年は全国をまわりたいと思います。

 

●オフの日はどのように過ごされていますか?

 スケジュールを立てて行動するのが苦手なので、何も決めずにふらっと電車に乗って、温泉に行ったり、ワインが好きなのでワインの試飲をしに行ったりします。今はナパワインが好きです。セリーヌ・ディオンのライブを見にラスベガスに行って、帰りにサンフランシスコのワイナリーでオーパス・ワンのワインを買って帰ってきたこともあります。
 他にはオープンカフェでたそがれていますね。そこで風景の写真集を眺めたり、締め切りに追われて曲を書いたり。それからカレーが好きなので、カレーを食べに電車で2時間かけて出かけたりすることもあります。好きなものに対してはわりと行動的です。

 

●東北・宮城・仙台のイメージをおしえてください。

 仙台の銀座山野楽器で行ったインストアライブでは、お客さんとの距離がすごく近くてあたたかさを感じました。
 震災の数週間後から東北の岩沼や石巻に歌いに行ったのですが、あの頃アーティストたちは何をどういう風に話そうか本当に頭を悩ませた時期だと思います。その時“僕は歌手だから歌で伝えたいと思います”と言って歌いました。石巻で「希望の歌」を歌った時みんながうわーと拍手をしてくれて、“がんばります”と言ってくれたあの瞬間は忘れられないですね。
 避難所に流れるFMで最初に聞いたのが僕の曲だったという方がいたり、山野楽器の気仙沼店で震災後最初に注文があったのが僕のCDだったという話しを聞いたことがあったり、宮城県は特別な思いが込み上げてくる場所です。

 

●読者の方にメッセージをお願いします。

 来年は10周年でひとつの区切りですが、きっとそれもひとつのプロセスにしかすぎないと思います。その先15年20年とずっと僕は音楽が、ライブが好きであり続けるでしょう。
 僕は本当に心が弱いですが、みなさんに応援されて、今の藤澤ノリマサがあることに感謝して、コンサートひとつひとつを大切に活動していきたいなと思っています。これからもよろしくお願いします。仙台の人たちにどれほど助けられたかわかりません。
 仙台で活躍するバンド カラーボトルの竹森マサユキさんとは元レーベルメイトで今は友だちなのですが、彼が東北・みやぎ復興マラソンに出場したりしているのを見て、僕も走りに来たいなと思いました。

 

●最後に、藤澤ノリマサさんにとって“音楽”とは?直筆で書いていただきました。

 

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柔らかで控えめな口調の中にまじるユーモア。やさしい表情の裏に秘められた情熱。自分ならではのスタイルを確立し、迷いながらも自分の音楽を追求し続ける藤澤さん。“生き方がへた”と笑う表情は、今でも人見知りの少年のように純粋です。自然と寄り添い支えてくれた人々への感謝を忘れずに、これからも一歩ずつ。枠にとらわれない楽曲やパフォーマンスで、きっとこれからも私たちを驚かせてくれるはず。来年10周年の活動にも注目です!

 

CD情報

ポップオペラの貴公子が、デビュー9周年の2017年に放つ衝撃の意欲作2連発!
両A面14thシングル【3形態】
愛するあなたを守りたい《作曲:中西圭三》
『Stay forever~あなたを守りたい/NHKみんなのうた「ダンディーひつじ執事」』

 

 

藤澤ノリマサ公式サイトはこちら

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