今回のmachico防災部は、地震や津波などの自然災害を疑似体験できる「せんだい災害VR」を紹介します。
「せんだい災害VR」とは、災害から命を守る力を身に付けるための体験型防災学習プログラム。学校や職場、町内会など、10名以上の団体であれば誰でも利用ができ、防災訓練や研修会などに活用されています。仙台市からの委託を受け、仙台市防災安全協会が2022年7月に運営をスタートし、2023年12月までに約9,000名の方が体験しました。
今回このプログラムに参加したのは、編集部の‟ぷりぱん”と‟てん”の2人。東日本大震災を経験している2人ですが、VRでの災害体験とは果たしてどのようなものなのでしょうか。
この企画は、「災害文化」の創造・発信を目指す仙台市との共同事業です。
「災害文化」とは、災害は発生するという認識のもと災害に備え、乗り越える様々な知恵やスキルの総称。いつどこで起こるかわからない自然災害から生き延びるためには、日頃から災害時のリスクを想定し、命を守るための意識や行動を身に付けておく必要があります。仙台市では、この「災害文化」を市民の皆さんと一緒に深め、広く発信する取り組みが始まっています。
>>詳細はこちら
今回教えてくれたのは…
仙台市防災・減災アドバイザー(仙台市危機管理局 防災・減災部 減災推進課)の早坂 政人さん
仙台市危機管理局 防災・減災部 減災推進課の谷 健太さん
せんだい災害VRで体験できるのは、「地震」「津波」「洪水・土砂災害」「内水氾濫」の4つ。それぞれの自然災害の予兆(前触れ)や発災の様子などを、臨場感あふれる360度の立体映像と音響で疑似体験することができます。
仙台市がVRを導入した狙いは、災害の恐ろしさを感じてもらうだけでなく自分自身の心構えや備えを見直すきっかけにしてもらうため。災害ごとに用意されたVR映像(各4分程度)を視聴した後に、それぞれの場面で注意すべきことやハザードマップの見方、必要な対策などを学ぶまでが一つのプログラムとなっています(計20~50分程度で終了)。
今回の取材では、2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」により再び関心が高まっている「地震」「津波」編を体験。VRゴーグルの付け方から丁寧に教えてもらい、いよいよ映像のスタートです。
「地震」編の映像は、一軒家のリビングにいる女性の視点から始まります。緊急地震速報が鳴り始めるとすぐに大きな揺れに襲われ、足元には物が散乱。大きな食器棚も倒れてきます。
揺れが収まった後、実際に頭を左右・後ろに向けてみると、部屋はめちゃくちゃの状態に。窓ガラスも割れ、思わず「うわぁ…」と声がこぼれます。
女性は家の外に避難しようとリビングのドアを開けようとしますが、反対側で何か大きな物がつかえて扉は開きません。そうしているうちに2度目の地震が発生。女性は机の下にもぐって安全姿勢を取りますが……。
―「はい、それではゴーグルを外してください」。
早坂さんの言葉にハッと現実に引き戻される私たち。地面は全く揺れていませんが、本当に地震が起きたと錯覚するほどリアルな映像で、強い恐怖を感じました(VR体験中に気分が悪くなったら、すぐにゴーグルを外しましょう)。
放心状態になりながらも、早坂さんと一緒に映像内で起きていたことを振り返ります。
「最初の揺れを感じた時、すぐに机の下にもぐって安全確保ができていましたね」
「実は転倒防止の固定がされていなかった家具だけ倒れていたんです。お二人は気づきましたか?」
「避難経路には、倒れやすいものを置かないようにしましょう。逃げ遅れの原因になってしまいます。」
早坂さんの話を聞きながら、地震が起きた時に取るべき行動や自宅の防災対策を一つずつ振り返っていきます。
「自宅に帰ったら、改めてご家族と一緒に‟備えの総点検”をしてみてくださいね」と渡されたのは、仙台市が作成する「わが家と地域の防災チェック表」。全部で31のチェック項目があり、自分に足りない備えを‟見える化”できます。
体験後、編集部2人でそれぞれチェックをしてみると、「棚の上の方に重いものを置いてしまっていたので、すぐに収納場所を入れ替えます!(てん)」「災害時には家族が1週間程度過ごせる量の食料・水が必要だけど、今の備蓄だと2~3日しかもたないかも…(ぷりぱん)」と、それぞれに必要な対策・備えが明確になりました。家族と防災について話すきっかけにもなるので、みなさんもぜひ活用してみてくださいね。
続いては、「津波」編を体験。大型ショッピングモールの駐車場や住宅街で津波に襲われる想定のVR映像が流れます。大津波警報が聞こえた直後、あっという間に津波が目前まで迫ってくる様子から、その威力やスピードを感じ取ることができます。
大きな津波が迫ってくる瞬間
映像を通じて津波の恐ろしさを再認識した後は、津波からの避難の基本を確認していきます。「あらかじめ避難場所を決めておくこと」や、「大きな揺れを感じたら津波情報を待たずに避難すること」「必ず徒歩で避難すること」といった大切な点を教えていただきました。また、災害発生時はあらゆる手段を使って情報を得ることも重要。自治体からの防災メールやSNSを事前に登録・フォローしておくと安心です(仙台市の場合:「杜の都防災メール」「仙台市危機管理局公式X」)。
さらに、仙台市が作成した「津波避難エリアと避難場所マップ」を用いて、自分が仙台市内の沿岸部にいる時に地震や津波が発生したらどこに逃げればよいかを話し合いました。
災害はいつどこで起こるかわかりません。自宅や職場のハザードマップはもちろんのこと、家族でよく足を運ぶ場所や旅行先などの情報も確認しておくことで、万が一に備える心構えをもっておきたいですね。
今回の体験はこれにて終了。想像していたよりもリアルな映像で、災害の怖さとともに自分自身に足りない備えを知る機会になりました。
せんだい災害VRは、仙台市内の学校や集会所、市民センター、企業など概ね10名以上の団体が利用できます(個人利用は不可、対象年齢は7歳以上)。これから予定している防災訓練や研修会などにぜひ活用してみてくださいね。詳しい利用方法はこちらから!
現在machicoでは、サイト内で貯まるポイント「マチコイン」を利用した
「令和6年能登半島地震」に対する義援金募金を行っています。
「machico防災部」の活動は、せんだいタウン情報machicoが
震災10年目を機にスタートさせた「つながるプロジェクト」の一環です。
最近見直した防災対策や新たに備えたモノ・コトを教えて!記事の感想もお待ちしています。