2023年11月、木々が色づく季節に、仙台から福島県飯舘村へ。手つかずの自然が広がる景色は、訪れた時期も相まってまるで絵画のよう。そんな車窓からの風景に癒されながら、車で約1時間半で飯舘村へ到着。
旅の目的は、隣県 福島県飯舘村の食材を使った料理を、仙台でたくさんの方に味わってもらう本質にこだわった「いいたてフェア」を作り上げるため。そして、だれもが楽しむことができる「食べる」ことを通じて、飯舘村とつながるきかっけを作りたい、そんな想いから。
フェアメニューを考案する仙台のシェフたちと一緒に、その風土を知り、食材を手塩にかけて育てている生産者の声を聞きながら、まるっと1日、飯舘村をたっぷり体感してきました。
食と農や自然とアート。立ち寄りスポットも織り交ぜながら、盛りだくさんの旅のレシピをお届けします。
最後には、この旅をもとに誕生した仙台で食べることができる期間限定メニュー4品をご紹介します。
ランチをいただいた「La Kasse (ラ カッセ)」から見た美しい風景
●「いいたて村の道の駅までい館」で飯舘村の特産品を知る・買う
●フェアメインメニュー食材「飯舘産黒毛和牛」。生産者のこだわりと苦難
●地元の食材にこだわる「La Kasse (ラ カッセ)」でランチタイム
●飯舘の花がモチーフ。おしゃれな古民家「工房マートル」でキャンドルを買う・作る
●2024年2月、期間限定!「いいたてフェア」オリジナルメニュー紹介
ドライブでのおでかけの楽しみのひとつと言えば「道の駅」。今回は「いいたて村の道の駅までい館」を集合場所にして、村を周遊する前に、その町や村のおすすめする特産品が並んでいる道の駅で、まずは飯舘村の予習からスタート。
福島県飯舘村は、福島県浜通りの平均標高450mの高地に位置しています。朝晩の寒暖差がある山間地の気候を活かした農業の他、花卉産業も盛んな村で、トルコギキョウ、アルストロメリア、カスミソウなどが美しく咲き誇ります。その為、「いいたて村の道の駅までい館」は花を復興のシンボルにした産業復興拠点の役割も担っています。
店内では、地元の農家の方が育てた旬の野菜やお土産選びに迷うほどのたくさんの加工品が販売されています。天井が高く、広々としたゆったり寛げるイートインスペースも完備。これからご紹介する「氣まぐれ茶屋ちえこ」の商品や「なつはぜの実」の加工品も販売されています。
いいたて村の道の駅までい館
https://madeikan.com/
「飯舘産黒毛和牛」畜産家 株式会社ゆーとぴあ 山田豊さん
現在、山田さん親子は地元飯舘村に戻り、精力的に『飯舘産黒毛和牛』を育て、こだわりの「肉創り」に挑んでいます。さらに、2023年7月には、精肉店「肉のゆーとぴあ」を立上げられました。お話をお聞きすると、山田さんは畜産を通して飯舘村を再建させる若き先駆者のようでした。
2月の「いいたてフェア」で使う料理に合う肉を相談中
仔牛の産地と呼ばれる福島県ですが、飯舘村で農業や畜産業を再スタートさせるために戻ってくる人は少なく、3000頭程いた飯舘村の牛は、現在600頭程。内、山田さんは現在80頭の牛を飼育しています。
綿密な検査を受けて、安全な基準を満たしている肉を出荷しても、全国平均と比べると単価は安く、風評被害は未だ続いています。裏を返せば、こだわりを持つ畜産家によって育てられた貴重な黒毛和牛を食べられるチャンスとも言えるのでないでしょうか。
畜産農家にいる牛はほとんど母牛なのだそうです。産まれた仔牛は300日で約300キロに成長します。「旨味のある」上質な肉にするため、畜産家によって飼料の配合もそれぞれだとか。
子供を産めなくなった母牛たちを、もともと田んぼだった場所を整備して放牧。のびのびと過ごす牛たち。草を餌にする場合は、基準を満たしたもののみ食べさせるという安全管理もされていました。
精肉店 肉のゆーとぴあ
https://niku-utopia.com/
お次は、飯舘村を味わうランチタイム。地元の食材を積極的に使った料理を提供している「La Kasse (ラ カッセ)」へおじゃましました。高台にあるお店に入ると、窓から11月の紅葉した山々を一望できました。季節によって採れる食材を使うため、訪れる度にいろんなメニューを味わうことができます。「いつもボリューム満点の量で提供してくれるので、おなかいっぱいになるよ!」と常連さんのうれしい声も。
今回いただいた料理はこちら。
※「なつはぜ」と「飯舘村黒毛和牛」の生産者さんのところへ行くと事前にお伝えしたため、ご配慮いただいたメニューです。
「飯舘産牛となつはぜのボロネーゼ」
パスタと同量では?!という程、飯舘産牛がごろごろと入っていて、肉の旨味となつはぜの実の食感を味わうことができる美味しい一品でした。
「なつはぜの実を使ったゼリー」
はじめてみるような鮮やかで美しい色。さわやかな甘みがあり、ボロネーゼの食後のデザートにぴったり。
La Kasse (ラ カッセ)
Googlemap
●電話番号:0244-42-1228
●定休日:毎週月曜、木曜
●Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100004194098014
ランチで食べた「なつはぜの実をつかったゼリー」。なんと、なつはぜの実は目の健康維持に良いといわれるアントシアニンの含有量がブルーベリーの6~7倍!とても栄養価の高い実です。なつはぜの実は渋みがあり、ブルーベーリーのように生で食べることができません。しかし、甘みが無い分、たくさんの食材との組み合わせができる食材でもあります。
「なつはぜ」生産者 佐藤 茂さん
佐藤さんは、30年前に山のなつはぜの木を畑に移植。福島市でも育ててみたものの、なつはぜの実が育つことはなかったそうです。飯舘村の山間地の気候かあってこそ、なつはぜの実は育ちます。
「なつはぜ」はツツジ科の落葉低木
※参考画像
実がつくまでに2~3年かかり、収穫時期は10月位。その時は生で販売されます。家庭ではジャム作り、ケーキ屋さんはパウンドケーキなどのお菓子作りなどに利用されるそうです。
現在は、飯舘村の特産品として、「いいたて村の道の駅までい館」でたくさんのなつはぜ商品が販売されています。
なつはぜのお茶、ジャム、ようかん、ゼリー、ソフトクリーム用のソース等
『工房マートル』キャンドル作家 大槻 美友さん
道を進み、辿り着いた先には、趣のある古民家が。以前大家族が住んでいたというこの家を改装し、大槻さんは、「工房マートル」をスタートしました。 東北芸術工科大学を卒業している大槻さんのセンスがあちらこちらに散りばめられた工房は、とても心地良い空間です。
大槻さんは、飯舘村地域おこし協力隊に着任。3年間の任期後も飯舘村に移住し、「工房マートル」を立ち上げ、飯舘村の花を活かしたキャンドル作家として活動中。「工房マートル」でのワークショップには、幅広い年代の方が集まります。 飯舘村のこれからを担う、村を愛する志高いキャンドル作家です。
大槻さんはこう話します。
「私ひとりの力ではなく、私のように何かをなりわいにしている人たちが飯舘村に移住して、長期的なチャレンジですが、いろんなお店が増えて、村を巡って、滞在できるような仕組みを、みんなで作っていきたいです」
ワークショップだけでなく、数あるキャンドルの中から好みのキャンドルを探して購入することもできます。
工房マートル
https://www.instagram.com/atelier.myrtlee/
旅の終盤。曲がりくねった山道を車で登った先にあったのが、「氣まぐれ茶屋ちえこ」。到着したのは夕方。天井が高く、歴史を感じる趣のある空間は、はじめて来たのになんだか懐かしさを感じます。
「あったかい内に食えぇ~」と料理を出しながらかわいい笑顔で迎えてくれたのは、この茶屋の看板娘ちえこさん(78歳)。「氣まぐれ茶屋ちえこ」には、県外からたくさんのお客様が訪れます。また、各メディアからの取材オファーもたくさん。
その人気の理由は、地元に根付いた料理の美味しさはもちろん、ちえこさんの強さと愛らしさにあります。私も以前お会いしてファンになったひとり。みんなで囲炉裏を囲んで、飯舘村で受け継がれている「凍み餅」を食べながらたくさんのお話をお聞きしました。
「ごんばっぱの凍み餅」に地元の野菜のお漬物、青梅の甘酢漬けを添えて。
「氣まぐれ茶屋ちえこ」佐々木千榮子さん(右)・娘かおりさん(左)
娘かおりさんは60歳で「氣まぐれ茶屋ちえこ」を継ぐ覚悟を決めました。そして、「こんな山奥まで来てくれる方たちに感謝しかない」そう話します。
ちえこさんは現在78歳。18歳で結婚し嫁ぎ、59歳まで嫁としての仕事を全うした話を「大変だったのよぉ~」と笑顔で語ります。そして、59歳のとき「氣まぐれ茶屋ちえこ」をスタートしました。60歳を目前にしてお店をスタートするバイタリティの源をお聞きしたところ「これからは私の第二の人生を楽しもうって思ったの」と茶目っ気たっぷりに話してくれましたが、本当の思いは、「ここで採れたもので、昔からここで食べていた料理を残していかなければならない。そう思ったの」という言葉。ちえこさんは、この飯舘村の山の上で地元の「食」を伝承するために、お店を立ち上げていました。
しかしそこから、ご自身のご病気、旦那様の他界、大震災と度重なる苦難がちえこさんを襲いました。それでも、避難していた福島市から、「夫の思い出いっぱいあるから」と飯舘村に戻り、「氣まぐれ茶屋ちえこ」を再開しています。ちえこさんは、飯舘村にたくさんの人を招く、村の功労者といっても過言ではありません。
「凍み餅」をご存知の方も多いと思いますが、これは、阿武隈山系に自生するごんぼっぱ(オヤマボクチ)と呼ばれる野草を練りこんで作られた凍み餅。代々受け継がれる郷土食です。
12月の内にごんぼっぱ(オヤマボクチ)を摘み、繊維が残る位まで5時間煮る。そして、1月の1番寒い日にそれを餅に入れ、つき、外に出す。そして、一晩で冷凍させる。なんという過酷な郷土食づくりなのでしょう。ちえこさんは「18歳から60年間やってるの。そう考えると、もっともっと代々継がれていった方がいいし、無くしたくないの。」と話します。
昔は缶に入れて保存食とされていました。湿気がなければいつまでも食べられるため、避難時の非常食にもなります。水でもどして、サッとフライパンで焼き、砂糖醤油やきな粉をつければとっても美味しい栄養たっぷりのおやつにも。
また、「氣まぐれ茶屋ちえこ」で製造してる、飯舘どぶろく「どぶちぇ」も人気。
「いいたて村の道の駅までい館」では、「氣まぐれ茶屋ちえこ」の飯舘どぶろく「どぶちぇ」と「ごんばっぱ凍み餅」も販売されていました。
※凍み餅は、作られる数に限りがある為、また人気商品の為、販売されていない場合もあります。
氣まぐれ茶屋ちえこ
Google map
●営業日:木・金・土・日 11:30~15:00
※12月~3月の冬季は店休
(完全予約制)
●公式HP:https://www.chuheisakai.ne.jp/kimagurechieko/
福島県飯舘村は未だ苦境にあっても、少しずつ前進している村です。今回の旅では、信念をもって村を愛する生産者のみなさんに出会うことができました。まだ知らぬ土地を知り、地元の方と触れあって、その魅力を発見して好きになる。それはずっと忘れない貴重な体験。旅の醍醐味ですね。
【提供期間】2024年2月1日(木)~29日(木)
【使用食材】飯舘産黒毛和牛バラ肉(ゆーとぴあ山田豊さん)、なつはぜ(佐藤茂さん)
飯舘産黒毛和牛のバラ肉を赤ワイン、牛のブイヨン、デミグラスソースで煮込んだソースに、アクセントなつはぜを加えたパスタです。
【使用食材】飯舘産黒毛和牛内もも(ゆーとぴあ山田豊さん)
飯舘産黒毛和牛をローストビーフと黒毛和牛の牛脂でソテーしたきのこを十五穀米の上にのせ、中央に温度卵とほんのりトリュフの香りを添えたライスボウル。全体をよく混ぜて食べると黒毛和牛の旨味が引き立ちます。
【使用食材】ちえこのごんぼっぱもち(氣まぐれ茶屋ちえこ)
水で戻したごんぼっぱもちにチーズと生ハムの塩気を加えてソテーしています。
トマトソースの酸味と旨味が加わり、一風変わった洋風のごんぼっぱもちに仕上がっています。
【使用食材】いいたて雪っ娘かぼちゃペースト、あぶくまもち
いいたて雪っ娘かぼちゃをイタリア風のプリンに仕上げます。あぶくまもちを使って作った優しい甘さの甘酒をジェラートにして添えます。
冬の夜、飯舘村の花を使ったキャンドルを灯しませんか?
飯舘村で生産者さん達とお会いし、みなさんから村への想いや大切にしている食材へのこだわりを伺い、同じ東北の地で頑張る仲間、同志だと強く感じることができました。
生産者さんが愛情を込めて育てた食材への想いを、私達がいかに丁寧に調理し、お客様に伝えることが出来るのかを考えながら完成したメニューです。 知って、食べて、楽しんでもらい、飯舘村に興味をもっていただけるようなフェアになればと思っています。
同じ想いを持つ生産者さんとの最強タッグ。
美味しくならない筈がありません。
公式サイト | https://www.vill.iitate.fukushima.jp/ |
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