三陸・金華山沖は世界三大漁港のひとつに選ばれるなど、全国でも有名な漁場のひとつ。そんな三陸の魅力としてあげられるのは、やはり新鮮な魚介類を使った「食体験」ですよね。
普段自分たちが食べている食材について、深く考える機会は少ないと思いますが、食材がみなさんの元へ届けられるまでの過程や文化、料理の成り立ちなどを学ぶことで、より深く食材を楽しむことができるのではないでしょうか。このように、食材の背景について学ぶ美食学のことを「ガストロノミー」といいます。
三陸には、最近水揚げされるようになった新しい食材や、今まであまり流通していなかった食材など、私たちが知らない魅力がまだまだあります。 このプロジェクトでは、そんな新たな「食」の体験に共感した料理人と生産者がタッグを組んで皆さんにお届けしていきます。料理人や生産者のたゆまぬ努力やこだわりを知ると、今まで何気なく食べていた三陸の食材たちがさらにおいしく、価値あるものに感じられるはずです。
今回お話をお聞きしたのは、大正元年創業『布施商店』の「石巻の仲買人、タイチ」こと布施太一社長と日本・東北と世界を繋ぐ架け橋として、上質なサービスを提供し続けている『ウェスティンホテル仙台』の宴会料理長 遠藤実さん。
生産者のこだわりが詰まった三陸の魚介類を、遠藤料理長が美味しく美しくアレンジ。生産者と料理人のコラボレーションによって完成した料理は、『ウェスティンホテル仙台』の冬の宴会プラン(2024年1月~3月提供予定)で味わうことができます。
さくら鱈、帆立貝、ムール貝など三陸の海産物をふんだんに用いた「三陸産魚介類のブイヤベース」(写真手前)は、貝の身のやわらかさを保ちながら、凝縮されたうまみをブイヤベースのスープに閉じ込めています。「スズキの雲丹パート焼き」(写真奥)は、雲丹、チーズ、バターを合わせたコク深い一品。彩りも華やかで見た目からも楽しめるお料理をぜひご堪能ください。
株式会社布施商店代表取締役 布施太一さん(写真左)、ウェスティンホテル仙台 宴会料理長 遠藤実さん(写真右)
「価値観が変わるほど美味しい魚が石巻にはたくさんいる。そのことを三陸・石巻から全国に届けたい」と話す布施社長。特に『布施商店』選りすぐりの「さくら真鱈」はシェフも絶賛するほど。(布施商店公式HPはこちら)
布施さん 三陸の魅力といえばまず魚種が豊富なこと。宮城県だけで200種類以上の海産物が獲れると言われています。現在は潮の流れが変わってきていて、今まで三陸で水揚げされていなかった魚も獲れるようになり、さらに魚種は増えてきています。山の養分が海に流れ込むような立地になっていて植物プランクトンが豊富だったり、親潮と黒潮の潮目でプランクトンが豊富であったりと、そこで育つ魚は必然的においしく育ちます。
遠藤さん やはり魚種の豊富さにつきますよね。僕は出身が南相馬で魚を食べる機会が多くありました。ただ宮城県に来て食文化が少し違っていて、ホヤは仙台にきてから初めて食べましたね。
びっくりしたのはドンコ(エゾイソアイナメ)をなめろうにして食べることです。とてもおいしいのにメジャーではないので広めたいと思っているのですが、傷みやすい食材なのが課題ですね。
布施さん 確かにドンコなどは産地の近くでしか食べられない食材ですよね。
最近は石巻でトラフグが水揚げされるようになっていて、我々も新しいチャレンジとして、今年はふぐの取扱責任者免許を取ろうと思っています。
また、スズキも最近三陸で水揚げが増えてきた魚のひとつで、ここ5~10年で増えてきた魚のひとつです。新しい魚種は食べ方が分からないので、東京や大阪に出荷されてしまうことが多いのですが、本来であれば地元の人に食べて欲しいと思っています。なので、今回宴会料理で使っていただけて嬉しいです。
遠藤さん 三陸で水揚げされていて、あまり流通していない魚種としてはマンボウやサメなんかもありますね。おいしいけど食べられていない食材はたくさんあって、それをどういう風に届けていくか学んでいかなければと思います。「マンボウっておいしいんだ」と消費者の方に知って欲しいですね。もちろんマンボウに限らず、こういった食材の固定概念を変えていきたいです。
布施さん せっかく食べてもらうなら、食材に料理という価値をつけて楽しみながら食べてもらえたら嬉しいですね。
遠藤さん 世界三大漁場としても有名な三陸の魅力を更に知って欲しいと思いますし、どういう風にその魚介たちを活かしていくかが料理人として大切だと感じます。
ウェスティンホテル仙台では老若男女・宗教問わず様々なお客様に合わせた料理を提供しており、その中に三陸の食材を組み合わせて使用しています。そこで三陸の食材を覚えてもらって、「美味しかったよ」といって帰って欲しいと思っています。
布施さん 今まで食材がどういう形でお客様に提供されているか知る機会はあまりなかったので、シェフの想いを聞くことができて嬉しいです。自分たちが関わった食材たちがこんなに素敵な料理に生まれ変わっていることを知り、仕事に対する想いや意識が変わりました。
お互いの食材・料理への想いとこだわりを知ることにより、相乗効果が生まれる対談となりました。このように生産の現場からお料理として私たちの元へ届くまでに、本当にさまざまな方の想いが詰まっていることを改めて実感しました。ぜひウェスティンホテル仙台にて、こだわりの詰まった宴会料理を味わってみてはいかがでしょう。
今回お話を伺ったのは、仙台秋保温泉・ホテル瑞鳳の調理部総料理長を務める鈴木宏信さんと、水産業の魅力発信や次世代へと続く未来の水産業の形を提案している若手漁師団体「フィッシャーマン・ジャパン」の津田祐樹さん。お二人には、それぞれの立場から三陸の魅力をお話いただきました。
鈴木さん 仙台・宮城に暮らす私たちにとって三陸の食材の魅力は、鮮度がよく、魚種も豊富だということ。そんな三陸の食材の“素直さ”と“力強さ”をお客様に伝えたいと思い、三陸の食材を使用しています。
津田さん 私は全国の漁村を見てきました。日本は海に面している県が多く、ほとんどの県が漁業を行っています。でも、どこでも新鮮でいい魚が獲れるかというと、そうではないということがわかりました。
石巻にいると新鮮な魚や豊富な魚種が当たり前でしたが、親潮と黒潮がぶつかる三陸の海はプランクトンが豊富で、全国的にみても圧倒的にいい魚が獲れるエリアです。とても恵まれている環境であることを改めて感じました。
鈴木さん 三陸の食材を扱う上で、「当たり前を当たり前にしない」というテーマを大切にしています。今まで東北には東北の食文化があって「これはこういう食べ方」という決まりのようなものがあったように感じます。それをいい意味で崩して、他の食材とかけ合わせたり、日本食ではない中華・洋食の技法とかけ合わせたりして、どういったものができるのかを考えています。終わりのないテーマにはなりますが、それが我々料理人の楽しみでもあります。
鈴木さん 最近は三陸で獲れる魚も変化していて、南の地方で獲れていたタチウオなどが三陸でも水揚げされるようになりました。そういった状況の今、南の地方で今までやっていた調理法をまねるのは簡単ですが、三陸の他の魚介類や宮城県の他の野菜などを掛け合わせることで、宮城県ならではの個性を生み出してお客様へ提供したいと思っています。
今まであまり流通していなかった食材でも、おいしい食材はたくさんあります。そんな食材を「これ三陸の食材だったんだ」と知ってもらえるように、消費者に届けていきたいと思っています。知られていなかった食材や今まであまり使われてこなかった食材など、プロの我々が使って紹介していかないと、一般の方になかなか伝わらないと思うので。
食材が原点であって、料理は最終地点。最終地点でどう変わっているか、どうおいしくなっているかが大切なんだと思います。
津田さん 港町には郷土料理ってあまりないんですよね。鮮度が良いものは生でそのまま食べるのが一番おいしいので。でも、さらに三陸の魅力を広めていくために、そんな鮮度の良い食材を活かした「食文化」も大切にしたいです。そのために、生産者と料理人が直接繋がることに意味があるのだと思います。
さらにお話を伺うと、三陸で海産物を扱っている生産者や加工業者のみなさんは、三陸の海に魅力を感じ、ご自身が手掛けている食材にこだわりを持っていることがわかりました。そんな食材へのこだわりと、シェフの料理へのこだわりをお話いただきました。
みなさん三陸の食材の魅力について口を揃えておっしゃるのは、やはり「鮮度の良さ」と「魚種の豊富さ」でした。そんな新鮮さを保ったまま、ホテルやお客様の元に届けるのが生産者や加工業者のみなさんの技術の見せどころ。市場の近くに処理・加工施設を持つことで、水揚げされた鮮度を保ったまま加工ができるのだそう。
調理部和食の村井義弘さん(写真左)も、三陸の新鮮な食材をいかに生かすかを考えて、料理を手掛けているそうです。また、三陸の豊富な魚種を使って、お客様にご満足いただく料理を様々な形で提供できることは、「料理人冥利に尽きる」と話します。加工されたものでも鮮度の良さを感じるそうで、やはり新鮮なまま加工できる三陸ならではの強みが生きているのだと感じました。
調理部中華の金子さん(写真右)は今回「あわびつぶ(モスソガイ)」という食材をフェアの中で使用しており、この食材を扱うのは今回が初めてだそう。下処理が難しい食材ですが、あわびのような食感でとってもおいしいのとのことです。このような料理を通じて、私たちも「あわびつぶ」という新たな食材との出会いに繋がりますね。
生産者のみなさんも「レストランやホテルで使いやすいように」というとことを意識して加工などを行っているそう。また自分たちがそうやって工夫してこだわりを持って出荷した食材たちが、どんな形で提供されているのか知ることもモチベーションに繋がるとお話されていました。
生産者の方、料理人の方それぞれのこだわりをお互いが知り、その想いを消費者のみなさんに届けていくという共通の目的をもって、また新たな食文化が生まれていくのではないでしょうか。
今回お話を伺ったみなさんのこだわりが詰まった三陸の食材を使った料理を、ホテル瑞鳳のビュッフェにて味わうことができます!
【開催期間】2023年6月17日(土)~8月中旬予定
宮城県産ブランド銀鮭「銀王」、宮城県産カツオのたたきなど三陸の新鮮な素材を生かしたお造りや寿司。脂のりがよいのが特徴の三陸産天然タチウオの焼き物も絶品です。
本州一の水揚げを誇る岩手洋野町産のキタムラサキウニと南三陸産のホヤをソースに使用した「雲丹とホヤのスパゲッティ」や、ベースに貝類の出汁、具材にピーチシャークやムール貝などを使用した「三陸スープカレー」など三陸の食材の新たな組み合わせの魅力に出会うことができます。「鰯のスペイン風マリネ 軽いスモークの香り」「みやぎサーモンのアンルーレと帆立のグリエ」もお楽しみください。
宮城県産「アワビツブ貝の中華炒め」や、「カナガシラの天婦羅」などをご提供。普段食卓ではあまり食べる機会のない食材のおいしさを体験することができます。
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