海と山に囲まれた宮城県。その自然の恩恵を受け、栄養たっぷりの地元の食材を食べることができることは、とても恵まれたこと。
狭い湾が複雑に入り込んだリアス式である宮城県石巻市の雄勝湾は、森の養分を含んだ大量の湧き水が山々から流れ込み、海底からの湧き水とも混ざり合うため、海水には豊富なミネラルがたっぷり。
この豊富なミネラルを含んだ「三陸ムール貝」をみなさんの食卓でもっと手軽に食べてもらいたいという思いから、安全で美味しい加工食品の販売に向けた商品開発を進めています。
今回、消費者としてのアドバイスをもらう為、machico会員のみなさんにご参加いただき、フードコーディネーターと生産者を交えた3者間で「三陸ムール貝加工食品」の品評座談会を開催しました。
雄勝湾の風景
三陸漁師の会社「海遊」の代表を務める伊藤浩光さんは現役の漁師。株式会社海遊(以下、海遊)は牡蠣・ホヤ・三陸ムール貝を生産しており、三陸の漁師や加工会社と連携しながら商品を販売しています。安心安全の食材を提供できるように、三陸ムール貝や牡蠣等の徹底した検査体制による安全と、海そして人を大切にし、生産者の顔の見える販売による安心にこだわり、強い信念を持って経営者として生産者として真摯に取り組みを続けています。
三陸漁師の会社「海遊」の代表でもあり漁師でもある伊藤さん(右)と広報の草野さん(左)
三陸ムール貝は、もともと「ムラサキガイ」として牡蠣にくっついてくる邪魔者として扱われ、海に戻したり捨てられていました。しかし、美味しい食材だということで、三陸の漁師のみなさんと連携し、海遊で集めて雄勝の海で備蓄し管理をしたことで、「三陸ムール貝」というブランドとして提供できるようになりました。
今まで捨てていたものをしっかりと活用する。これはSDGs(持続可能な開発目標)の14番目のゴール「海の豊かさを守ろう」につながります。
6次産業化とは、生産者である漁師や農家さんの食材を加工・商品化し世に送り出す。これらを一貫して行い、生産物の価値を高めることを言います。今回の品評座談会のコーディネーターは「三陸ムール貝」加工食品の開発に携わっている6次産業化プランナーでもあり、管理栄養士・フードコーディネーターとしても活躍されている一般社団法人IKI ZEN(イキゼン)の斎藤由布子さん。参加者はたくさんの応募の中から選ばれた女性6名。
当日は、自分の生活の中で購入したり調理するときをイメージした具体的なアドバイスや忌憚のない味への感想が多く、海遊の伊藤社長は「加工場で活かせる意見をいただきとても参考になりました。三陸の新たなブランドにしていけるように、これからもがんばっていきます」と話されていました。
6次産業化プランナーでもある斎藤さん。
持っているのは、今回試食した「蒸しムール貝」と「三陸ムール貝のワイン蒸し」
みなさんはムール貝をどんなシーンで食べていますか?三陸沿岸部出身の方は馴染みのある地元の料理として食べているかと思いますが、沿岸部出身でない方は、ワインバルなどの飲食店で食べることの方が多いのではないでしょうか?
海遊では、活ムール貝を一部スーパーやネット通販で販売しています。しかし、いざ家庭で調理するとなると、まだ扱いに慣れない食材ということもあり、なかなかアレンジに悩むという意見も。そこで「加工品にして、おうちに帰ってすぐ食べれるような状態で販売したい」という思いから、今回のメニュー開発がスタートしました。そして、今回開発中の商品はすべて無添加・保存料不使用。本来の食材の活かした加工品を食卓に届けることを目指しています。
新鮮なムール貝を捕ったその日に、きれいに洗った後に蒸してパッキング。真空にして急速冷凍して販売。湯せんであたためるだけて食べることができます。
何の味付けがなくても潮の香りと味が濃厚に広がるのが「三陸ムール貝」の特徴。
しかし、みんなの感想は「素材そのものの味はいいが、身も汁も塩気が強い」という意見が多数。
・味の調整ができるように、塩気の強さをパッケージに書いてほしい。
・何も加えていないというムール貝の味を活かすため、その塩気を活かすスープやパスタ、パエリアなどの調理方法をパッケージに写真付きで掲載してはどうか。
また、ムール貝についている糸のようなものが気になるという意見も。ムール貝には「足糸(そくし)」と言われる糸のようなものがあり、そこから栄養を取り込んでいます。調理前に取り除く必要がありますが、加工品では既に取り除かれた状態で販売されています。しかし、細かい糸のようなものなので、一部商品に入り込むことも。食べて害になるものではないそうですが、やはり消費者としては気になるものですよね。適確な発言が続きます。
石巻雄勝、南三陸、陸前高田などの生産者と、2019年にスタートしたばかりの南三陸ワイナリーの白ワインを使った、まさに「地産地消」のワイン蒸しが誕生。スペイン産のオリーブオイルでコーティングして仕上げています。
こちらも、真空にして冷凍販売。湯せんであたためるだけて食べることができます。
「ワインやオリーブオイルの効果でまろやかではあるが、やはり塩気が強い」という意見が多数。
・スペイン産のオリーブオイルの味も強く感じたので、単品で食べるよりは、海外ではムール貝をポテトと食べることもあるので、「バケットとワインと一緒に」など食べ方も紹介すると手に取りやすいと思う。
・両親が石巻出身で小さい頃からムール貝を食べてきたが、加工食品として食べたことはないという阿部さん(写真下)。「ホタテなどと違い、ムール貝は貝を開けてみないと身が大きいのか小さいのかわからない。むき身にした状態で販売した方が、身の大きさもわかるし、家庭での料理に使いやすいのでは」という、石巻出身の主婦ならではの納得の意見も。
ペルーの伝統料理「セビーチェ」。南米で海産物が美味しい港では、その地域ごとの味がある「故郷のマリネ」ともいえます。日本では珍しいこの料理が、三陸ムール貝とみちのくの食材が出会って、新たに誕生しました。貝はレモン汁に付け込み、こちらも無添加・保存料不使用で瓶に入れて流通予定なので、食材は最小限に。
「貝のしょっぱさがなくなりさっぱりしていて美味しく、紫玉ねぎの色も鮮やかで見た目にも買いやすい」と3品の中で一番人気。
・とてもいい酸味で美味しい料理だが、セビーチェを知らない人は手に取りにくい。パッケージに味をイメージできる説明があると買いやすい。
・色も鮮やかなので、瓶に入れておしゃれに販売できると思う。
・サラダなどにそのままかけても美味しく食べることができそう。
・全体的に美味しいが、貝の身の食感がなくなったように感じる、という意見も。
これは、レモンの成分で身のたんぱく質が固まってしまうため。保存料や添加物を使わないこだわりを貫く商品開発のむずかしさを感じました。
・貝からとてもいい出汁が出ているので、ミネラルたっぷりの味噌汁やスープセット。
・ムール貝は日常よりは頑張って作る料理のイメージ。もっと「三陸ムール貝」を気軽に食べられる料理として知ってもらえるように、500円位で観光地などで売るのはどうか。
・今回の蒸しムール貝などはそのまま食べると、塩見の強さが気になったが、それを活用すればいろんな料理に活かせるという良いところでもある。他の具材も加えて、ラーメンやうどん、パスタやパエリア等を作るときに活躍しそう。
・海外旅行が趣味でたくさんの国に行ったことがあるニックネームChicocoさん(写真下)。
「トルコの料理で、ムール貝の中にお米を詰めて蒸したものがある。貝を開けると米と貝が出てきて、それにレモンをかけて片方の貝殻で食べるパエリアと似たようなとても美味しい料理。ごはん食でもある日本なので、お米と合わせた三陸ムール貝を使った料理の提案もいいのでは」という海外での体験を活かしたアイディアもいただきました。
今回の品評座談会は生産者と消費者が直接意見を交わすことができる貴重な会となりました。参加者のみなさんの忌憚のない意見は開発中の商品に活かされ、三陸の漁師さんや関係するたくさんの人の想いとともに、三陸の新たなブランドとして宮城だけでなく全国の食卓に届けられることでしょう。
安心安全を一番に掲げ、添加物を使わずに試行錯誤しながら、現在も商品化を続行中。炊飯器に入れてぱっと作れる「三陸ムール貝」を使ったパエリアの素も開発中だそうです。
開発中の商品が流通するにはもう少し時間が必要なので、この記事を読んで三陸の海の幸を食べたくなった方には、国分町にある「オストラ デ オーレ (Ostra de ole)」がおすすめ。海遊の直営店だから、朝出荷の新鮮な三陸の魚介を仙台市街で食べることができますよ。
宮城県仙台市青葉区国分町2丁目1−3 エーラクフレンディアビル 1F[地図]
※この施策はみやぎ中小企業チャレンジ応援基金事業です。
公式サイト | https://www.kai-you.in/ |
---|
みんなの「三陸ムール貝を使ったこんな料理や商品があるといいな」を教えて!