仙台市中心部に位置する「荒町商店街(仙台市若林区)」。ここで、商店街と荒町児童館・荒町市民センターが中心となり、荒町学区の防犯意識を高める取り組みが行われています。その名も、『荒町 子まもりプロジェクト』。犯罪を起こさせない安心安全なまちを目指し、若林警察署、(株)全日警など地域の様々な機関が連携しています。
こうした地域の「防犯」活動は、実は、「防災」や「子育て」にも役立つもの。日頃のコミュニケーションが活発な地域は、災害が起きた時の避難もスムーズに行えます。さらに、地域の人との関わりが増えると子どもたちの居場所も増え、地域ぐるみで子育てすることにもつながります。
そこで今回は、マチコ編集部が「荒町 子まもりプロジェクト」の活動に潜入!10月のハロウィンに合わせて開催されたイベントに参加し、子どもたちや荒町地区の方々と交流してきました。
荒町商店街振興組合、荒町児童館、荒町市民センターが中心となり、荒町学区のあらゆる機関や団体、商店、企業が連携し、子どもたちの防犯に取り組む活動。地域の防犯マップの作成や、日常的な声がけ・コミュニケーションに加え、「子まもり防犯月間」になっている10月には子どもたちやその親、地域のお店などを対象にした防犯教室や防犯訓練を開催するなど、活発な活動を行っています。
子まもり防犯月間の10月末に開催された「’21あらまち子まもりハロウィン」。荒町小学校の児童たちが商店街やその周辺の企業を巡って挨拶をしながらお菓子をもらうイベントを通じて、いざという時にお店に助けを求める行動につなげてほしいと、2018年から公にスタートしました。
今年参加したのは32店舗。商店街にある飲食店や美容室、銀行、郵便局など、あらゆる立ち寄りスポットにハロウィンの仮装をした子どもたちが集まり、活気あふれる雰囲気に包まれました。
荒町小学校のすぐそばに拠点を置く株式会社ユーメディア(マチコ編集部の所属企業!)も今年からプロジェクトに参加。もちろんハロウィンイベントにも初参加し、お菓子を用意した会社ロビーにはたくさんの子どもたちが訪問してくれました。
各店舗、感染症対策を行いながらの開催となりましたが、元気いっぱいに駆け込んでくる子どもたちの姿を見て、大人たちも自然と笑顔に^^
子どもたちからも、「お店の人が優しかった」「行ったことがない場所に入れて楽しかった」などの感想が聞かれ、地域の関わりが深まったイベントとなりました。
イベント中は大人たちが道に立って、子どもたちを安全に誘導する工夫も行われました
実はこのハロウィンイベントは、今から10年以上前、商店街の一店舗が始めた取り組みが地域に広がったもの。「子どもたちに何かあった時に駆け込めるお店を」という主旨のもと、少しずつ参加・協力先を増やし、プロジェクト化に至りました。
発起人となったのは、商店街で理容室「B-Ark pool(ビーアークプール)」を営む庄子康一さん。庄子さんと、活動を協働で推進する荒町小学校の田辺泰宏校長のお二人にお話を伺いました!
庄子康一さん(写真右)と田辺泰宏校長先生(写真左)
マチコ編集部 庄子さんはなぜ、この活動を始めるようになったのですか?
庄子さん 2008年に見た、とあるテレビ番組がきっかけでした。当時、北海道の小さなまちで、一般家庭や地域のお店が子どもたちにお菓子を配るイベントが行われていて、日頃から挨拶が交わされているそのまちでは、子どもに対する犯罪がほとんど起きていないという内容だったんです。そのニュースを知って、自分たちのお店も子どもたちが駆け込める場所にしたいと考えるように。早速、その年のハロウィンに合わせて、子どもたちにお菓子を配る取り組みを始めました。
マチコ編集部 北海道の取り組みを参考に、すぐに活動を始められたのですね。
庄子さん はい、その事例を参考にしました。毎年地道に活動を続け、5~6年経った頃には、ハロウィン以外の日にも子どもたちがとふらっと立ち寄ってくれるようになり、やっと「子どもたちが駆け込める場所」になってきたのかなと実感。この取り組みを他のお店にも広げられないかと考え、商店街の組合を通じて参加を呼びかけ、毎年少しずつ参加店舗が増えてきました。
田辺先生 私がこの活動のお話を聞いたのは、教育委員会の地域連携を推進する部署にいた時でした。仙台市内いろいろなところを見ても、地域主導の取り組みをしているケースはなかったので、大変驚いたことを覚えています。
庄子さんの元に駆け寄ってくる子どもたち
マチコ編集部 学校や家庭以外にも子どもたちを見守る場所があるのは、とても良いことですよね。
庄子さん 防犯上はもちろん、さまざまな面でメリットがあると思います。例えば、子どもたちが学校や児童館で先生方に見せる姿と、道端で会った時に私に見せる姿と、親御さんと一緒にいる時の姿って、どれも違うんです。その子なりに、相手に合わせて自分の表現方法を変えている。それって社会に出てからも必要な力なので、子どもの頃からいろんな大人に接するのはとても良い経験だと思います。それに、学校や家庭以外にも、その日の出来事や愚痴を気軽に話せる居場所があったら、子どもたちも自分の心を開放できますよね。
田辺先生 大人は自分で息抜きする場所をつくれますが、子どもはそうじゃないですからね。
庄子さん そうですね。そういった居場所づくりを推進するためには、学校と地域が連携してつながりを持てる機会をたくさん作ることが重要です。学校の授業に地域の人が参加したり、地域のイベント・行事に子どもたちと先生方が参加したり、あらゆる場面で関わりを深めていければ、防犯だけでなく防災や子育てといった多様な取り組みにもつながっていくのかなと。
マチコ編集部 他の地域でこうした取り組みを行うためには、どのようなことが必要でしょうか?
庄子さん まずは、近くにあるお店や施設、企業がどんなことをしているのかを知ることだと思います。長く住んでいても、その地域にどんなリソースがあるのかわからない人の方が多いですよね。私たちも元々はお互いのことを深く知らない状態でしたが、児童館と一緒に荒町幕末のお土産品を商店街に復活させたり、学校の活動に参加したりする中でそれぞれの役割や強みを理解していきました。さまざまな強みを持ったお店・団体・企業が「地域資源」となって連携すれば、あらゆる地域課題を解決できるはずです。「荒町 子まもりプロジェクト」は、どこのまちでも実現できる仕組みづくりを念頭に話し合いを重ねているので、みんなで一緒に考えていけたらうれしいです。
田辺先生 今やどの地域でも子供会や町内会が衰退し、各家庭同士のつながりが希薄になっています。その現状は、なかなか変えられないものです。だからこそ、残された学校と地域が子どもたちを真ん中に置いて活発に連携することで、各家庭も巻き込んでいけるのではないかと考えています。これからも地域の皆さんの力を借りながら、みんなで子どもを育てる環境を作っていければと思います。
子どもたちを想う庄子さんの行動から生まれた「荒町 子まもりプロジェクト」。一店舗から始まった活動がここまで広がったのは、みんなが同じように子どもたちの健やかな成長を祈っているからだと気づかされました。
そして、子どもを見守り育てる取り組みを通じて、解決できる地域課題がたくさんあることも知りました。防犯も、防災も、子育ても、地域みんなで一緒に考え取り組むことが重要です。皆さんも、自分が暮らす地域でできることを考えてみませんか?
冬の防災対策を考えよう(2021年12月公開予定)
冬は、寒さ・雪・凍結・乾燥など、自然災害や火災、事故が起こりすい季節。そんな冬に備えて始めたい防災対策をみんなで考え、実践します!
「machico防災部」の活動は、せんだいタウン情報machicoが
震災10年目を機にスタートさせた「つながるプロジェクト」の一環です。
地域みんなで、子どもたちを育む。
あなたの地域で取り組んでいる活動があれば教えて!記事の感想もお待ちしています!