2021年11月11日
未来を担う学生編集部が体験取材!ゼロカーボンにチャレンジする宮城の先進企業
Vol.2 登米町森林組合

2050年ゼロカーボン社会の実現に向けて、日本を含む世界各国が走り出していることをご存じでしょうか?宮城県もまた、その実現を目指し地球温暖化対策と気候変動適応策の必要性を県民の皆様に伝えるために、様々な取り組みをしています。

そこで、20~30年後の経済活動を担う大学生のCOLORweb学生編集部が、宮城県内のゼロカーボン先進企業の担当者の方々に率直な質問を投げかけ、自ら学び、現場を体験取材した内容をお届けすることにしました。

今回取材におじゃましたのは、県内有数の林業地域である登米市にある「登米町(とよままち)森林組合」。お話を伺ったのは、登米市農林振興課の千葉さん(写真左)と登米町森林組合の竹中さん(写真右)です。竹中さんは森林組合監査士であり森林セラピーガイドでもある森林の専門家。NHK朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」で林業考証を担当され、劇中では主人公の百音が働く森林組合の仕事がリアルに描かれていました。

森林は地球温暖化対策にとって、なくてはならない重要な役割を担っています。そんな森林がもたらす地球にとって大切なお話を伺うことができました。

 

 

連続テレビ小説「おかえりモネ」の舞台となった海とつながる登米の森

宮城県の北東部に位置する登米市。北上川を挟んで東に森林、西には田畑が広がり、市全体の面積の41%を森林が占めています。「おかえりモネ」では森と海のつながりの大切さを伝えていましたが、森・水・川の恩恵を受けた登米市の肥沃な耕土からはたくさんの農作物が生産されます。また、毎冬たくさんの水鳥たちが越冬するために訪れる伊豆沼・内沼(いずぬま・うちぬま)は、ラムサール条約湿地に登録されており、自然豊かで美しい風景が残っています。

 

私たちを守り育む、森林の持つ機能は幅広い!

森林が二酸化炭素を吸収し、光合成によって酸素を生成するという地球温暖化の防止につながる機能を持つことをご存じの方は多いと思いますが、他にも様々な役割を担っていることを知ることができました。

みなさんは「水源涵養(かんよう)」という言葉を聞いたことがありますか?
雨が降ると森林の土の中にゆっくりしみこみ、貯留することで土砂災害を防ぎます。また、雨水が森林から河川へゆっくりと流れ出し、水の量が平準化されることで洪水を防ぎ、川の流量を安定させる機能も持っています。
さらに、雨水が森林土壌を通過することで水質は浄化され、私たちの飲み水や農業・工業用水となります。このような森林の働きを「水源涵養」といいます。

また、森林は私たちの暮らしに身近に寄り添い守ってくれる存在であることも教えていただきました。
強い風が吹いてきたときには家屋を守り、海沿いであれば潮風を遮る防潮林となるなど、私たちを守ってくれています。

このほか、木材資源・紙の原料(パルプ)としての用途やキノコ・山菜などの森の恵み、キャンプ場・森林セラピー・森林浴などのレクリエーションの場としての役割もあります。
このように、森林の持つ機能は幅広く、その役割が多岐に渡っていることを学ぶことができました。

 

林業の課題と自然災害

戦後、多くのスギが植林され、現在では登米市の森林の約5割を杉の木が占めています。スギの木はナラ・サクラ・ケヤキなどの広葉樹と比べて固すぎず重すぎず、まっすぐ成長することもあり、住宅建材に適していることから積極的に植林されたのだそうです。

しかし、現在は全国的に林業の後継者不足や働き手の高齢化などから、森林の管理が困難になっている状況です。木を植えないとすぐに土砂流出や洪水などの災害が起きてしまうため、災害が起きないようにできるだけ木を植えるようにしているそうですが、広い面積の対応は国の整備機関に依頼して造林してもらっている現状とのこと。
林業の雇用の問題は、自然災害に直結していることを学びました。

また、危険を伴う仕事でありながら、収益や収入が仕事の内容に追いつかないことが大きな理由で、若い人たちはなかなか林業の道に進まないそうです。40~50年かけて育てた直径20センチの杉の木の価格がなんと4千円程度、1㎥で1万2千円と想像以上に安い値段でした。現在は、補助金を活用しないと林業は成立しない状況だそうです。

木を植えるにも草を刈るにも、森林を維持するにはお金がかかるので、伐採後に再造林をして、森林づくりのサイクルを回していくのが困難なのは登米市だけでなく全国的な林業の課題です。しかし、林業がおろそかになれば、地球環境にも大きな影響をもたらすため、若者が林業に興味を持ってもらえるようなきっかけや行政の対策がいち早く必要だと感じました。

 

知ってる?「FSC森林認証」。FSCラベルがついている製品を選ぼう!

世界共通の基準で認証した森林・木材から生産された製品には、FSCマークが表示されています。私たちの身近な生活でいえば、お菓子の包装やティッシュペーパーなど。また、2022年の年賀はがきのすべてにFSC認証紙が採用されているそうです。

一定のルールに従って森を管理し、そこから生まれた木材をラベリング・差別化し、適切に管理された木材を選択・使用することで、森林を持続可能なものにしていこうという取組が「FSC森林認証」です。
「FSC森林認証」は10の原則に基づき認証されます。管理活動や計画、労働者の権利のほか、環境を守っていることを数値化しているか、木材資源をきちんと活用しているか、そこに住んでいる人たちの不利益になっていないか、地域社会の権利も守っているかなど、認証を受けた後も毎年監査を受ける必要があります。

豊かな森林資源を次の世代へ引き継ぐことを目的に、今回お話を伺った登米市や登米町森林組合などを構成員とする森林を管理・経営する組織として「登米市森林管理協議会」を設立。2016年に「FSC森林認証」を取得しました。取得のきっかけは「オリンピックの建物に登米市産の木材を提供したい。」という思いからだったそうです。(認証材であることが要件であったため)
同協議会では、森林管理の認証である「FM認証」と林産物の適切な加工・流通の認証である「CoC認証」を平行して実施することで、持続可能な森林経営と登米市産木材の需要拡大を担っています。

 

では、なぜこのような森林認証が必要なのでしょう?

南米やアフリカなどでは、違法に伐採される森林が非常に多く、その背景には耕作地にして食料を得るためという貧困に関わる問題もあります。残念ながら日本でも違法伐採しているところがあるそうです。

世界の森林率と比較しても日本は森に恵まれている国。しかし日本は、自国に豊富な森があるのに世界中から木材を輸入している特殊な国で、木材自給率は41.8%程度とのこと。
世界中で森林の消失が進んでおり、赤道直下付近の森林の減少は顕著で、日本の木材輸入の高まりは、輸入先の地域の森林の減少を招き、ひいては地球温暖化を引き起こしてしまっているのです。

また、「違法伐採には貧困問題が根本にあるので、複合的に考えていかないといけない。SDGsのひとつひとつの項目が、有機的につながっている構図だ」と竹中さんは話されました。(SDGsのゴール1「貧困を泣くそう」、13「気候変動に具体的な対策を」、15「陸の豊かさも守ろう」)

日本ではまだまだ森林認証(FM認証)が進んでいないそうです。それは、日本が木材の多くを輸入している国であることも一因です。
しかし、近年、製紙業界や各大手企業では、自分たちの扱う木材が環境に配慮して適切に管理された認証材かどうかを重視しており、それが住宅業界等にも浸透しつつあるという明るい兆しのお話も聞くことができました。

FSC森林認証は地球温暖化を防ぐために、とても有効で大切なものでした。
私たちも意識してFSCマークが表示された製品を選択していきましょう!

 

(写真左)森林認証材使用スクールデスク「まなび」の天板はナラの「登米材」を使っています。2021年3月までに登米市内の小中学校で6200台採用されているとのこと。ナラ材の自然な色調が教室を明るく優しく整えてくれているそうです。

 

(写真左)「おかえりモネ」で実際に使用された、登米材で製作された椅子。仙台箪笥も手掛ける大衡村在住の伝統工芸士の方が作られたそうです。背もたれの中央には登米の「米」マークがデザインされていました。

 

ナラ材の机も椅子もすべすべで触り心地がよかったです。また、軽さに驚きました。こんな素敵な家具を使うことが温暖化対策にもつながるんですね。

 

次世代の木材乾燥システム「太陽熱木材乾燥庫ToSMS(トスムス)」を見学

登米町森林組合の事務所から車で5分ほどのところにある製材所。その敷地内に「太陽熱木材乾燥庫ToSMS」がありました。

高断熱・高気密などの住宅性能は十分に乾燥した木材でなければ発揮されません。そのため、これまで電気や灯油(化石燃料)といった大量のエネルギーを使って木材を乾燥させていたそうですが、これでは温室効果ガスである二酸化炭素を大量に排出してしまいます。

「いかに灯油を少なく効率的に使うか」を考える必要がありました。
「太陽熱木材乾燥庫ToSMS」は太陽の熱を効率的に活用することで、電気をほぼ使わずに木材を乾燥させることができ、二酸化炭素の排出も抑え、さらに効率よく多くの木材を乾燥させることで原価を抑えて販売することも可能にする次世代の木材乾燥システムです。

真南に面したトタン板で集められた太陽熱により温められた空気が、ビニールハウス内に入っていく仕組み。

 

温度が高く湿度が低い風を循環させる太陽熱利用の木材乾燥庫。化石燃料に頼らずに乾燥しながら木材を大量にストックすることができます。「おかえりモネ」でも、ビニールハウスの中で木材を乾燥させていましたね。

 

最終工程の灯油を使った木材乾燥機。「太陽熱木材乾燥庫ToSMS」の導入で、灯油の使用量は最小限に抑えられ、脱炭素に近づくことを可能にしました。

 

最後にアドバイス~私たちができることとは~

地球温暖化対策につながるゼロカーボン社会の実現は、企業だけでなく私たち一人一人の意識もとても大切。
「林業100年(自分を起点に前後50年)」という言葉を伺いましたが、2030~2050年の社会を担う私たちが適正な森林管理の推進を応援するには、どのような行動をとっていくべきかアドバイスをお願いいたします。

 

日本は二酸化炭素排出量の多い国の一つ。二酸化炭素の排出を生活レベルの中で考えていかなければならなりません。その中のひとつに地元の木材を選択して利用することが挙げられます。
一見、木製に見えても実は木製ではない製品は多いですが、森林認証材の木を使うことを意識して、生活の中で木材をどうやって使っていくかということを考えてほしいです。それが脱炭素、地球温暖化対策につながっていきます。
また、地元の木材を使うことで、その土地の産業も潤うことも覚えておいてほしいですね。
「登米懐古館」や「おかえりモネ」の中で森林組合の事務所として使われた長沼ボート場クラブハウス、このほか、県内の商業施設などで登米市産の森林認証材を使用した木質建材が使われているので、ぜひ足を運んで「登米材」を感じてみてください。

登米町(とよままち)森林組合

公式サイト https://forest100.jp/

 

「みやぎゼロカーボンチャレンジ2050」

森林は地球温暖化対策にとってなくてはならない大切なもの。記事を読んで感じたことを自由に投稿してください。

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