2050年ゼロカーボン社会の実現に向けて、日本を含む世界各国が走り出していることを知っていますか?宮城県もまた、その実現を目指し地球温暖化対策と気候変動適応策の必要性を県民の皆様に伝えるために、様々な取り組みをしています。
今回、20~30年後の経済活動を担う大学生の学生編集部が、宮城県内のゼロカーボン先進企業の担当者の方々に率直な質問を投げかけ、自ら学び、現場を体験取材した内容をお届けすることにしました。
私たちの生活に欠かせないスーパーマーケットなどの流通・小売業では、様々な段階で二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを排出し、地球温暖化が課題となっています。今回はそうした大きな課題に先進的に取り組んでいる「みやぎ生協」を取材しました。取材現場は「みやぎ生協リサイクルセンター」です。そのリサイクルセンターを管理する環境管理室の一條さんと秋葉さんに、COLORweb 学生編集部がお話を伺いました。
ごみの分別やレジ袋の辞退、フードロス対策の必要性など、私たちが日常で行っていることの意義を感じてもらえる体験記事になっています。安心して暮らせる未来の地球のために行動するなら、その意味と重要性を知って気持ちよく実行していきましょう!
石油を原料とし、生産過程や廃棄の際に排出されるCO2が問題となっているレジ袋。
私たちがレジ袋の辞退をするようになったのは、つい最近のことのように感じますが、みやぎ生協では、1990年にレジ袋削減のため「レジ袋節約スタンプ」を始めていました。
なんと約30年も前から実施していたんですね。2009年にはみやぎ生協48店舗でレジ袋の有料化も始めています。
このような環境に配慮した取り組みを地道に進めていく中、1997年には地球環境へ配慮した企業活動を行っていると国際的に認められることを意味する「ISO14001」認証を全国の生協ではじめて取得されました。
そして2006年、みやぎ生協の店舗や事業所で発生したリサイクル可能な資源物(古紙、ダンボール、牛乳パック、発砲スチロール、卵パック、プラスチック類、食品残さ)を、自分たちの手で、収集・運搬・保管・加工・最終処理を行うことで、そのコストの集約化と削減を実現するために、今回の取材先であるみやぎ生協リサクイクルセンターの運用がスタートしたそうです。
プラスチックが高炉(※)用燃料になる過程
※製鉄所の主要な設備で、鉄鉱石を熱処理し鉄を取り出すための炉
発泡スチロールは再生プラスチックの原料へ
発泡スチロールのシールも手作業で剥がされていて、とても手間がかかっていることを知りました。
ひとつは再生可能エネルギーへの切り替えです。再生可能エネルギーとは、一度利用しても再生が可能で資源が枯渇せず、繰り返し利用できるエネルギーのことで、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱などが挙げられ、これらには、温室効果ガスの1つであるCO2をほとんど排出しないという特徴があります。みやぎ生協の一部店舗(11店舗)と物流センター(2か所)では、屋上での太陽光発電により電力を自家消費しているそうです。また、みやぎ生協では、店舗の冷蔵・冷凍機器の省エネ対策がCO2排出量の削減に一番効果が高いとお話しされていました。ほかにも、店舗から出る廃食油を利用したSVO(Straight Vegetable Oil)発電による電力をリサイクルセンター内で利用したり、電気自動車を導入するなどのたくさんの工夫によって、2020年度時点ですでに「2013年比60%削減」という結果を出しています。
さらに、CO2を排出しない水素エネルギーの事業にも取り組んでいます。富谷市にある物流センターの太陽光発電から作られた電気を使って、水を電気分解し、水素を取り出して電気エネルギーとして使用する「低炭素水素技術実証実験」が終了したそうです。今後も水素を活用した次のエネルギー発電にチャレンジしていく予定とのこと。
ついつい食べきれない量を買ってしまったり、売り切れない商品を作りすぎてしまい、捨ててしまう「フードロス」は焼却処分を伴うので、結果的にCO2の排出につながってしまいます。みやぎ生協では、店舗ごとの客数や天候のデータを管理することで売り上げを予測し、売り切れる量を作ることでロスを極力減らしているそうですが、それでも売れ残った商品は、各店舗からリサイクルセンターに運ばれ、リサイクルセンター内で「エコフィード化」(食品残さ等を利用して飼料を製造すること)し、栗原市の農場で家畜の餌として再利用されています。エコフィードで育った豚肉は甘味があるため、今後はブランド化も視野に入れていきたいとお話しされていました。
こういった取り組みによって、野菜くずや魚のアラなどの食品残さの食品リサイクル率は72%から90%台にまで引き上げられたそうです。
エコフィード化(液飼料)の様子
みやぎ生協のリサイクルセンターでは、全国の生協ではじめてエコフィードを製造。2014年には、一般社団法人日本有機資源協会主催「第2回食品産業もったいない大賞」において、「エコフィード化(液飼料)によるCO2削減」が「食料産業局長賞」を受賞しています。
一企業がゼロカーボン社会の実現のために、利益の追求を超えた価値ある資源循環型の取り組みをこんなにもたくさんされていることに、とても驚きました。
地球温暖化対策につながるゼロカーボン社会の実現は、企業だけでなく私たち一人一人の意識もとても大切。最後に一條さんと秋葉さんよりアドバイスをいただきました。
まずは、「自分ができることをする」という気持ちをいつも持つことが大切だと思います。
やはりプラスチックの問題は大きいです。再生できないプラスチックもあるので、レジ袋だけでなく、コンビニなどでもらうプラスチック製のスプーンなども極力もらわないように意識してください。そして、ごみの分別はしっかり行いましょう。
また、リサイクルにばかり目を向けがちですが、ゴミを極力出さないこと、いらないものは買わないことも大事です。Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3つのRがありますが、リサイクルは一番最後。まずは、ゴミ自体を出さない(リデュース)ような行動を心がけていくことが大切ですね。
手作業で色分けされるプラスチックハンガー
段ボールやチラシなどの紙類と発泡スチロールや廃プラスチックの再資源化は、なんと100%!
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