2018年05月02日
“想い”と“記憶”がつむぐ物語 第1回「仙台短編文学賞」受賞作品発表
第1回仙台短編文学賞

 第1回仙台短編文学賞受賞式

 2017年、仙台に新しい文学賞が誕生しました。東北の文学の発展を目指す「仙台短編文学賞」です。同年8月から12月まで募集が行われ、今年3月、応募総数576編の中から受賞作品が決定しました。その後仙台市内で行われた授賞式で、記念すべき第1回目の受賞者5名が表彰状を受け取りました。それぞれの“想い”と“記憶”を言葉に変え、素晴らしい物語を作り上げた受賞者の方々にお話を伺いました。

 

仙台短編文学賞とは?

 仙台市内に本社を置く「荒蝦夷」「河北新報社」「プレスアート」がつくる実行委員会が主催する、仙台発の文学賞。
 2010年秋に構想を開始し、2011年4月に公式発表を予定していた中、東日本大震災が発生。それから7年の月日が経った今、再び実行委員会が集結し、第1回目がスタートした。
 募集作品は、仙台・宮城・東北と何らかの関連がある未発表作品。テーマやジャンルは不問でありながら、応募作品の約8割が震災から影響を受けた内容となった。応募総数は576編。選考委員は、仙台市在住の作家・佐伯一麦さん。宮城県を中心とする東北6県のほか、海外からも作品が寄せられた。

 

第1回 仙台短編文学賞 受賞作品

大賞 『奥州ゆきを抄』
岸ノ里玉夫(58歳・大阪府在住)

河北新報社賞 『あわいの花火』
安堂 玲(47歳・仙台市在住)

プレスアート賞 『ごく限られた場所に降った雪』
村上サカナ(50歳・七ヶ浜町在住)

東北学院大学賞 『賽と落葉』
芽応マチ(19歳・仙台市在住)

東北学院大学賞(奨励賞) 『河童の涙』
藤澤佳子(16歳・盛岡市在住)

(年齢:応募時点)

 

受賞者インタビュー

大賞 岸ノ里玉夫さん

岸ノ里玉夫さん

 見事大賞に輝いた岸ノ里玉夫さんは、大阪府出身。地元で高校教諭として働く傍ら、「三咲光郎」の筆名で多数の文学作品を世に送り出しています。今回の受賞作品『奥州ゆきを抄』で描いたテーマは、震災の記憶の風化。慰霊のために伝統芸能の復活を試みる語り手の物語です。

―受賞にあたって
「23年前、阪神淡路大震災を経験し、震災に関して何か書かなければという気持ちがありましたが、なかなか言葉が出てきませんでした。震災から7年経った時にやっと、東京の出版社から小説を出させていただきましたが、その時の東京と関西では“震災に対する空気”が違うことを感じました。震災の風化を実感した瞬間でした。 その体験が心の中に深く沈み、その後浮かび上がってきた言葉が、風化に抗うような一つの文化となって人の心を結びつけるものなのだなと、今回の物語を書きながら気づくことができました。」

―震災を経験していない・覚えていない生徒たちに対しては、どのように震災のことを話されていますか?
「震災のことを話す機会がある時は、生徒たち自身がご両親やお祖父さん・お祖母さんとどんな話をしているのかということを聞くようにしています。つまり“追体験”ですね。自分では経験していなくても、身近な人の話はすごく強く心に残るものです。だからこそ、実際に震災を経験した人たちは、自身の体験をしっかり伝えていかなければと思います。」

―小説のアイディアはどんな時に思いつくのですか?
「私の場合は、関心を持った事柄について資料を掻き集め、読み漁ることから始まります。そうしているうちに、次第に物語のアイディアが出てくることが多いです。」

―岸ノ里さんにとって文学とは?
「人間を深く見つめるものです。また、小説や文学は読むだけで言葉の基礎を作ってくれます。若い人たちにもたくさん読んでほしいですね。」

 

プレスアート賞 村上サカナさん

村上サカナさん

 二人姉妹の母でもある主婦の村上サカナさんは、岩手県陸前高田市出身。東日本大震災で実家が被災し、両親は行方不明のままです。
 これまでに執筆の経験はほとんどありませんでしたが、文学賞の募集を見た瞬間に「書きたい」という気持ちが体中からあふれ、たった数日で書き上げてしまったといいます。海沿いの小さな町で水道工務店を営む父と、お節介で話し好きの母を中心に、兄と妹家族4人の、震災前の日常を描きました。

―受賞にあたって
「これまで私は、背中を丸めて、極力目立たないように、目立たないようにと、それを信条として生きてきました。そんな私の言葉を見つけてくださり、このような見晴らしの良い場所まで引き上げてくださった皆さまに感謝しております。今後は、背筋を伸ばして生きていこうと思います。」

―作中に出てくるエピソードは、ご自身の幼少期の実体験に基づくものはありますか?
「ほとんどがフィクションですが、故郷の街並みや父と母をモデルに書いた部分もあります。 震災後、陸前高田のイメージがすごく悪くなってしまったと思います。“気の毒だね”と言われるのが嫌で、出身地も言えなくなってしまいました。でも震災前の陸前高田は、自然が豊かで人情があふれる場所でした。そのため今回はつらい場所を連想させるストーリーにはしたくないと思い、震災前の日常をメインに描きました。」

―この物語を書く前と後で、ご自身の気持ちに変化はありましたか?
「この話を書くまでは、周りの人たちに震災のことを話したり、悲しいと言ってはいけないと思っていました。みんなつらいですからね。それに、元々読書がすごく好きだったのですが、震災後は本を読む気持ちにもなれませんでした。でも、作品を書き上げてからは肩の荷が下りて心が軽くなったように感じました。心の中が整理されたように思います。最近、また本が読めるようになってきました。」

―村上さんにとって文学とは?
「心の旅ですね。家の中にいても、本の世界に入れば窓の外に飛び出すことができるからです。」

 

 震災後、それぞれの胸の内に抱えていた想いを文字に書き起こした受賞者の皆さん。“震災”という出来事へのイメージや考え方は人それぞれですが、彼らが生み出した物語にはどんな人の心にも寄り添う優しさが込められています。現在、マチコのお買い物コーナー「マチモール」では、受賞作5編が全て読める特別セットを販売中です。

仙台短編文学賞作品セット

 岸ノ里玉夫さんの『奥州ゆきを抄』と村上サカナさんの『ごく限られた場所に降った雪』が掲載された『Kappo93号』と、河北新報社賞受賞作『あわいの花火』が掲載された3月15日付の河北新報第2朝刊、東北学院大学賞受賞作『賽と落葉』と同賞奨励賞『河童の涙』が掲載された『震災学12号』の3つがセットになっています。それぞれの想いが込めれた5つの物語を、じっくり味わってみてください。
 第2回の文学賞は、今年7月より募集を開始し、11月中旬が締め切りの予定です。詳しくは仙台短編文学賞の公式サイトをご覧ください。

マチモールはこちら

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 今年2月~3月にマチコサイト内で実施した「震災に関する意識調査2018」。たくさんの方からご回答いただいた結果を、現在サイト内で公開しています。仙台短編文学賞作品と合わせてぜひご覧いただき、震災や防災意識を見つめ直すきっかけにしてください。

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